例えば、サイズは小さい方がおいしい、美しくきれいなみかんよりスレキズのあるみかんの方がおいしい、皮を剥きにくいみかんが実はおいしい・・・などの情報は生産地の人ならではの情報である。

 昔は卸売業者がそうした情報を小売店(八百屋)に伝え、小売店の店員がお客さんに伝えていた。しかし、現在のスーパーの店員には、そうした情報が全くと言っていいほど伝わってこない、あるいは、スーパーの店員がそうした情報をお客さんに伝えなくなった。例えば「はるみ」「せとか」といった最近のみかんについて、店頭で詳しく説明できる店員はほとんどいないのではないか。

 つまり、商売の基本である情報間隔差への埋め合わせ、すなわち商品知識・商品情報の説明ができていないのである。

 専門的な知識をしっかりと消費者に教えることによって売れ行きや売り方が変わってくるということを小売業者は理解しなければならない。農家でみかんを作っている人からすると当たり前すぎて、おいしいみかんの見分け方などの情報を教えてくれないらしい。そのため、とち亀物産の上野真歳社長は、生産者組合の会合に出席したり、多くの生産者との話し合いをしたりして生産情報を熱心に収集したという。

 生産者の持っている情報と消費者の知識との隔差を見極め、そのギャップをどのような説明で埋めるのか、どのように訴えるのか、が小売業の根幹である。「ジャパネットたかた」の成長が、消費者にいかにわかりやすく訴え、いかに親しみを持って使ってもらえるかという説明の仕方に支えられていたのは、周知の通りである。