おせち料理の紅白かまぼこやおでんのちくわなど、私たちにとって身近な食べもの「かまぼこ」。かまぼこが歴史上に登場して今年で900年という。長い歴史に培われたかまぼこは日本人のソウルフードだ。魚をおいしく食べるための古くて新しい知恵が詰まっている。
かまぼこのルーツはちくわ
かまぼこの歴史は古く、最も古い記録は平安時代の1115(永久3)年、『祝宴の膳の図』とされている。これは1146(久安2)年ごろ成立の『類聚雑要抄』の写しの中に見られる、1115年当時に関白だった藤原忠実が転居した際の祝膳の献立図で、そこには「蒲鉾」の字とちくわに似た料理が描かれている。
また、解説で最も古いものには、室町時代中期の1528(享禄元)年に記された『宗吾大草紙』がある。それによれば、当時のかまぼこは、竹の棒にすりつぶした魚肉を塗りつけて焼いたもので、現在のちくわに近い。その様子が、植物のガマの穂に似ていることから、「かまぼこ(蒲鉾)」と呼ばれるようになった。その当時の主な原料は淡水魚で、中でもナマズが最上だったようだ。
海に囲まれた日本では、豊富に魚が獲れるが、冷蔵庫などない昔では保存がきかない。そこで保存方法の1つとしてかまぼこがさかんにつくられるようになった。江戸時代後期には、魚肉をすりつぶしたすり身を板の上に乗せて蒸した「板かまぼこ」が作られ始めた。一方、すり身を棒に巻きつけて焼いたものは「ちくわ(竹輪)」と呼ばれるようになった。棒を引き抜いた筒状の姿が竹に似ているためである。