先月27日夜、マレーシアのジョホールバルにて「JAZZ FEST 2015」(於:Hotel Double Tree by Hilton)という音楽イベントがあった。主な出演アーティストは渡辺貞男が率いるバンドで、約2時間にわたる盛況なステージとなった(参考:渡辺貞男フェイスブックページ)。

ナベサダ登場に大喝采、マレーシア・シンガポール音楽業界の特性

 マレーシア人司会者が「レジェンド」と紹介していたが、さすが世界のナベサダである。ステージに登場するとマレーシア人聴衆はスタンディング・オベーションで出迎えた。特に今回は、セネガル出身のンジャセ・ニャン(N'diasse Niang)によるアフリカ民族系パーカッションをリズムベースにしたボサノバが印象的だった。

 今回は渡辺貞男の今年のアジアツアー第1弾だったようで、翌日、香港へ向かった。ちなみに、収容人数は約300人で、チケット代は500リンギット(約1万6500円)、300リンギット、(約9900円)、100リンギット(約3300円)の3種類であった。

 ジョホールバルで生活する外国人や地元の人々にとって、日頃、エンターテイメント、特に音楽イベントの少なさは物足りないところだ。そんな中、今回の音楽イベントの企画は当地では画期的なもので、ジョホール州のスルタン(君主)と王妃も出席された。

 隣のシンガポールでも音楽イベントはあるにはあるが、時々大物海外アーティストのコンサートがあるだけで、しかも料金が高い。

 例えば、昨年3月、シンガポールのIndoor Stadium(収客4000人程度)で開催されたエリック・クラプトンのコンサート(約2時間、16曲演奏)に行ったが、プレミア席は300シンガポールドル(約2万6400円)という価格だ。

 もともと多民族国家のマレーシア・シンガポールでは、民族毎に好む音楽ジャンルがはっきりと分かれている。

 端的に言えば、マレー系はインドネシアと同じで若者中心に欧米のメタルやハードロックを好み、中華系は台湾や香港のバラード曲を好む。インド系はインド音楽を好み、インド映画のサントラを公開前にCDで楽しみ、映画を観た後にサントラで余韻に浸る。K−POPだけは民族に関係なく若者に人気がある。

 今、当地の音楽業界で存在感があるのは、まず圧倒的に欧米(メタル、ハードロック中心)。そして、韓国(K-POP)、台湾・香港(バラード流行歌)、インド(ダンス調の流行歌)といったところだろうか。

 音楽業者は明確に区分されている。たまたま知人がジョホールバル拠点でDJやヒップホップ系アーティストのマネジメント会社を経営しているが、そのようなマネジメント会社には小規模業者が多く、得意なジャンルによって棲み分けがあるようだ。

 プロモーターについても、勢いのある欧米専門(UnUsual Music Promotions、LAMC Productions、Lushington Entertainments)やK-POP専門(Running Into The Sun)等、ジャンルによって棲み分けがなされている。