11月の米国の油井・ガス井の掘削認可件数が原油安の影響で40%近く急減したことから、60~90日後のリグの稼働数が減るとの観測があるが、シェール開発企業は掘削装置を減らし生産性の低い鉱床での生産を減らす一方で、主要鉱床で増産し生産全体を伸ばすことを見込んでいる。
英国のエコノミスト誌(2014年12月6日号)は、「石油ビジネス全体がいわば飲料の製造に近いものになっている」と指摘する。
シェールオイルの開発は、市場の動静に応じて少しずつ投資を増やせるという特徴がある。従来型の大型油田の場合、原油が発見されても、その開発には何年もの時間と膨大なコストがかかる。だがシェール油井は最短の場合1週間で掘削でき、コストも約150万ドルと安価である。シェールオイル企業はシェール層がどこにあるかを熟知しており、掘削装置も簡単に調達できる環境にある。
「世界の喉が渇いたら、いつでもボトリング工場の稼働率を上げればいい」(同誌)というように、シェール企業は臨機応変な対応が可能なのである。
シェールオイルの総生産量(日量300万バレル)は、日量9000万バレルに上る世界の石油消費量のごく一部にすぎない。しかし米国のシェールオイルは、OPECが減産すれば相場の上昇を見込んで即座に増産するため、世界の原油価格の上値を抑え続ける存在となってしまった。
サブプライム危機と同様の構図
このように、OPECは打つ手がない状態に追い込まれつつあるが、原油価格がこのまま下落を続けば、ジャンク債バブルが破裂する危険性が高まってしまう。
米財務省が12月に「投資家が金融の安定に突きつける脅威が増している」との見解を示したように、現在の金融市場におけるリスクの引受先は銀行から債券の買い手に移りつつあると言われている。投資家が頻繁に取り引きされない債券(ジャンク債)に投資しているとされているからだ。
米国に本拠を置く資産運用会社ブラックロックは、原油価格急落について、「多くの資産運用会社が運用するポートフォリオの構成が時勢に合わなくなり、新たに発生した投資機会を逃している」と語っている。ちなみに同社の運用資産総額は世界のGDP(72兆ドル)の6%に当たる4.5兆ドル(2014年7月現在)と世界最大である。