原油価格の下落が止まらない

 12月に入り、JPモルガン・チェースが「原油価格が1バレル当たり65ドルを割り込み、今後3年間その水準にとどまれば、エネルギー関連のジャンク債の最大40%が今後数年間でデフォルトを起こす可能性がある」との見方を示した。

 バークレイズも「原油価格が1バレル=60ドルを下回り、その水準がしばらく続くと、多額の借り入れを抱える米エネルギー企業は見向きもされなくなる」として60ドルを節目に財務上の不安が意識されるようになるとの懸念を抱いている。

 一方、サウジアラビアをはじめとする中東産油国にとっても「1バレル=60ドル」が現状を維持できるギリギリのラインとの観測が強まっている。

 くしくも60ドルという価格が浮上しているが、この価格を維持するのは困難な情勢である(12月11日、2009年7月以来で初めて1バレル=60ドルを割り込み、「原油価格は自由落下の状態」と囁かれ始めている)。

 世界の原油市場の供給過剰のレベルは日量200万バレルとされ、供給過剰な状態が2015年に入っても継続するとの見方が広まっていることから、「原油価格は2015年に1バレル=43ドルまで下落する可能性がある(モルガンスタンレー)」という予想まで出ている。アラブ首長国連邦のエネルギー大臣からは、「原油価格が1バレル=40ドルに下落しても、OPECは直ちには減産せず、少なくとも3カ月間は状況を見る」との発言も飛び出した。

石油ビジネスがまるで「飲料の製造」に?

 危機感を高めつつあるOPEC諸国は11月に産油量を徐々に減少させている(前月比1.4%減の日量3056万バレル)が、シェールオイルの増産が止まらない。原油価格の急落を受け、ここ数年急成長してきたシェールオイルも鈍化は避けられないと見られていたが、12月8日、米エネルギー省は「米国のシェールオイル生産は来年1月も大幅な拡大が続く」という見通しを示したように、当面は急ピッチの生産が続きそうだ。

 調査会社IHSによれば、典型的なシェール油井コストは、油井をより迅速に掘削し、各油井からより多くの石油を抽出する術を石油業者が学んだため、過去1年で1バレル当たり70ドルから57ドルに低下しているという。