ジャンク債市場で資金を調達してきたエネルギー企業

 今年のジャンク債の発行は11月末までに3440億ドルに達し、昨年の3480億ドルを上回り過去最高となる見込みである。そして、その好調の原因を作りだしているのが実はエネルギー企業である。

 エネルギー企業はリーマンショック後の金融緩和の下、ジャンク債市場で多額の資金を調達し、シェール分野などの開発を手がけてきた。10月末時点でエネルギー企業が発行するジャンク債の総額は2972億ドルで、5年前の約3倍の規模に達している。10年前は4%に過ぎなかった市場全体のシェアは16%にまでに急拡大している。

 しかし、この活況に水を差しているのが原油価格の急落である。

 ジャンク債を購入した投資家は原油価格の急落を全く想定していなかったため、エネルギー関連のジャンク債の3分の1がほとんど取引されておらず(社債利回りは過去5年で最高の9.5%に達し、債券投資家は85億ドル以上の損失を出したとの観測がある)、11月下旬からジャンク債市場全体に対する警戒感が高まっているのだ。

 現在シェール層から石油を採掘している企業の多くは、当初天然ガスの生産を始めたが供給過剰により米国の天然ガス価格が急落したため、採算割れに陥ってしまった。この苦境を脱するべく生産を石油に切り替え、石油部門から上がる収益で糊口を凌ぐとともに、ジャンク債市場から投資資金を獲得することにより増産を続けてきた。だが、今後はどうなるのだろうか。

 最近の原油価格の下落により、ヒューストンの石油・天然ガス開発企業が、多額の債務を抱えて資金繰りに窮し、10月に米連邦破産法11条の適用を申請した。この企業に限らずかなりの数のエネルギー企業が今後苦境に追い込まれ、来年は企業再生案件が増えるとして、「バンカーらが手ぐすねを引いている」との噂も流れている。

 ジャーナリストの田中宇氏は、「米国のシェール開発はブレーキがついていないトラックが暴走しているようなものだ。シェール革命は米金融界が立案した詐欺であり、主役は石油業界でなく金融業界だ。原油安で儲からないといって減産すると、シェール革命が失敗したと見なされ、債券が売れなくなり、金融が破綻する。シェール業界は原油安でも増産せねばならない」とその「自転車操業」ぶりを説明する。さらに「今後石油相場がさらに下がると、米国のシェール投資が儲からない投資であることが顕在化し、投資が枯渇して業者の多くが連鎖破綻する」としている。