櫻井氏によれば、アイルランド氏は、朝鮮半島は日本にとって次の要因で脅威だったと指摘しているそうである。(1)李王朝の数世紀にわたる失政の結果、朝鮮は国家としての独立を維持することができなかった、(2)その結果、ロシアや清が朝鮮半島に触手を伸ばし、日本の国家防衛にとって許容し難い戦略的状況が生じかねなかった。
ただただ帝国主義的に領土の拡張に乗り出したわけではない。当時の国際情勢や大韓帝国の現状が大きく反映していたのである。あらためて言うが、朝鮮併合を肯定するつもりはない。だがこうした情勢を無視した批判もまた妥当ではない。
韓国の反日に北朝鮮の影響?
それにしても韓国の執拗な反日攻撃の背景に何があるのだろうか。2014年2月に日本戦略研究フォーラムの主催で「韓国はどこに向かっているのか」と題するシンポジウムがあった。そこでパネラーの話を聞いて正直驚いた。北朝鮮の金日成の「チュチェ(主体)思想」など、韓国では相手にもされていないとばかり思っていた。
ところがそうではないのだ。北朝鮮との融和路線を取った金大中、盧武鉉両氏の路線を受け継ぐ野党・民主党は、韓国の国会議員300人中127議席を占めており、少なくない議員が、北朝鮮による韓国併合を目指しているというのだ。
また金日成時代、対南工作担当要員に、韓国で反政府デモに参加している学生の中から頭の良い者たちを選んで勉強させ、判事、検察官、弁護士などに育て上げてきたという。つまりチュチェ思想に共鳴する人物が、国家機能の重要なポジションにいるのである。チュチェ思想など陳腐なものと思っていたが、少なくとも韓国ではそうではない実態があるということだ。
確かに韓国では「反共法」が存在したためマルクス主義の文献は長い間禁書とされてきた。だが、1980年代に入り、民主化とともにマルクス主義に関する書籍が段階的に解禁されていったことで、マルクス主義を受容した民主化運動が発展していった。いまではマルクス・エンゲルス研究所が大学に作られ、マルクス・エンゲルス全集の発行準備も行われているという。世界では、社会主義、共産主義の敗北と破綻が常識になっているが、韓国ではそうはなっていないのだ。世界とは逆コースを走っているようだ。