冨山 最大の違いは、きちんと見える化して経営しているかどうかでしょうね。ダメな会社は区分経理すらもまともにできていない。いまどき10万円もあれば会計ソフトを買って簡単に財務会計ができます。そんなこともできないんじゃ、もうお引き取り願った方がいいと思いますよ。

──冨山さんは地方公共交通の運営会社(みちのりホールディングス)を立ち上げて、東北の5つのバス会社の再生を行いました。いちばん最初に着手したのは、やはり見える化ですか

冨山 そうです。それまでは、路線別や便別の収支を正確に把握することをまったくやっていなかった。

──具体的にどういうことを行ったのですか。

冨山 例えば、路線別の収支をリアルタイムで把握するためにICカードを導入する。また、バスというのは同じ路線を走っても運転手によって燃費のばらつきがあります。そこで、タコメーターをつけてアクセルの踏み方を全部測る。さらには、運転手によって事故率が違うので、ドライブレコーダーをつけて全部録画して何が違うのかを比較する。そういうことをコツコツとやるわけです。

 見える化して、無駄なコストを抑える。儲かってないことはやめて、儲かることに力を入れる。当たり前のことをやった結果、5つの会社とも赤字だったのが黒字になっています。いま、日本のすべてのバス会社の中でトップクラスの生産性だと思います。

──そこまで徹底的に見える化すべきなのですね。

冨山 でも、それくらいのことは製造業ではとっくの昔にやっているんですよ。なにを今さらという話です。ローカル経済圏は製造業に比べて市場経済の圧力が働きにくいし、規制に守られている産業が多い。だから非効率な事業者が残ってしまう。グローバル経済圏で本当にシビアな競争を勝ち抜いてきた企業群と比べると、はっきり言ってお粗末きわまりないんですよ。

──想像以上に前近代的と言っていい。

冨山 100社を超える中小企業の再生に携わりましたけど、そういう意味での期待が裏切られたことはほとんどないですね。

 多くの経営者は「自分たちはちゃんとやっている」と言うんだけど、ちゃんとやってないんですよ。例えば給料を払うにしてもちゃんとした人事評価の仕組みがない。これじゃはっきり言って、能力的に経営者としては厳しい。そんな人が50歳、60歳になってから習慣って変えられないでしょ。

──社長に直接「会社を畳んだ方がいいですよ」と言うこともあるんですか。

冨山 言いますよ。「息子さんは経営者の器じゃないから継がせない方がいいですよ」と言うこともあります。無理に頑張って生き延びさせると悲劇が起きます。それよりも会社が傾く前に親の代で事業を売却した方がいい。息子さんも幸せだし、従業員も経営手腕のある会社に移った方が幸せです。その方がみんな幸せですよ。

──なんとか会社を変えたいと思う2代目もいるでしょう。危機感のある若い社長はどうすればいいですか。