また、オリエント・キャピタル・リサーチ社(香港)によれば、2014年第1四半期にはシカゴで4億6100万米ドル、ロンドンで3800万米ドル、シドニーに2億4200万米ドル、メルボルンに1億5000万米ドル、ロスに1億4400万米ドルが中国大陸から流れ込んだと言う。
同社のアンドリュー・コリエ社長は、中国からの投資に警戒を隠さない。アメリカのニュースサイト「Business Insider」は2014年7月7日、「中国のシャドーバンキングは全世界の不動産市場を混乱させる」という見出しで、コリエ社長の発言を次のように掲載した。
「中国における全融取引のうちシャドーバンキングが40%を占めているとしたら、(海外不動産投資は)21億ドルでは済まされない。おそらくこの倍は投資されているだろう」
同氏は世界の不動産市場に流れ込む大量のチャイナマネーについて、「この1年で100億ドルになる」と予想する。同時に、「このうちどれだけが不良債権になるだろうか」とも懸念する。
「海外不動産への投資の多くは信託、理財商品などシャドーバンキングを経由して行われる。その不良債権率を10%とすれば、100億ドル中10億ドルが回収不能となる」(同)
今、国際社会ではチャイナマネーの出所と融資の質が問われている。非正規金融を経由した中国の資金が世界各都市の経済を牽引しているのだとしたら、破綻したときの影響はあまりにも大きすぎる。
海外に飛び出した中国の不動産投資
2013年、中国平安保険集団がイギリスのロイズの本社ビルを2億6000万ポンド(約390億円)で手に入れた。ロンドン金融街シティーの象徴でもあるビルが中国資本の手に落ちたことは大きな注目を集めた。この買収を支えたのが、中国平安保険集団傘下の平安信託という信託会社である。平安信託は2013年末時点で2万人の富裕層を顧客に抱え、そのうち500万元以上の資産を持つ顧客は4200人に上ると言われている。
前述したように、近年、中国では富裕層が資産を海外に移転させる動きが加速している。それに伴い、平安信託も海外戦略を強化しようとしている。イギリスでの事業展開に加え、アメリカでも不動産ファンドを立ち上げるという。