「健康的」というイメージや見た目の美しさから海外でブームになっている日本食。各国で日本食レストランも急増し、また、日本食を食べようと来日する外国人も増加している。日本の農水産物・食品の輸出も増加を続けている。
政府は、農林水産物・食品の輸出額を2020年に1兆円規模にするとの目標を掲げた。各都道府県も海外で自治体主催の展示会を行うなど、輸出の促進に向けた積極的な取り組みを行っている。
輸出先の中心になっているのは米国とアジア。特に高所得者層の増加が著しいアジアへの輸出の伸びが顕著だ。こうした動きの背景には、日本の人口が減少に転じ、国内市場が規模縮小していることがある。新たな市場の開拓が迫られているのだ。日本食品の輸出の可能性と課題を探ってみたい。
世界に展開する日本のレストランチェーン
ユネスコの無形文化遺産に登録された和食。世界では「健康的な食事」として以前から注目を浴びていた。2013年時点で日本食レストランは世界に約5万5000店ある(外務省調べ)。2006年には約2万4000店だったので急増していることが分かる。主な地域では、アメリカなど北米に1万7000店、アジアに約2万7000店あると推計されている。
日本のレストランチェーンも次々と海外に進出している。家庭的な和定食が好評の「大戸屋」は、2014年現在、タイに42店舗、台湾に17店舗、インドネシアに6店舗、香港に4店舗、上海に1店舗、シンガポールに3店舗、アメリカに2店舗を出店している。
ちなみに、「和食」ではないが、カレーハウス「CoCo壱番屋」もアジアを中心に出店。現在、中国に36店舗、香港に7店舗、台湾に21店舗、韓国に20店舗、タイに20店舗、シンガポールに3店舗、インドネシアに1店舗ある。このように、近年レストランチェーンの出店の中心になっているのがアジア圏だ。
アジア圏への輸出額は過去最高に
農林水産省によると、世界の食の市場規模は2009年時点で340兆円。2020年にはアジア圏の経済成長などで680兆円に倍増するという。アジア圏だけ見ると、市場規模は2009年の82兆円から229兆円へと約3倍に増加すると予測されている。背景には、アジアの経済発展で高額所得者層が急激に増加していることがある。