前回「アンネの日記」損壊の問題に触れました。ちょうどその直後に、私たちが東京アートミュージアムを拠点として活動しているプラザ・ファウンデーション(東京都調布市仙川町・小中陽太郎理事長)の年次総会・理事懇談会があり、ここで緊急展示を決定しました。

 5月5日こどもの日に合わせて、世界各国で出版されている「アンネの日記」の書籍を展示することを考えています。ちょうど東京アートミュージアムの5月展が「現代イスラエル写真展」であった偶然も重なって、こういう方針になりました。

 展示は「アンネの日記」の本がたくさんありますので、破りたいという方がおられれば、もちろん破ることも可能です(当然ながら主催者は警察に通報し、刑事責任を問われますが)。良くも悪くも私は評論家ではなく、実際にアクションしつつ考え進んでいくスタイルの芸術音楽屋で、こういう展開になっています。

 こうした問題については、対岸の火事の論評ではなく、有言実行であらゆる人種差別(レイシズム)、ファシズムの傾向に芸術の立場から疑義を呈していきます。これについては詳細が決まったら、また告知させていただきたいと思います。

 私も理事を務める「プラザ・ファウンデーション」は、芸術・文化・国際交流を3本柱とする財団法人で、3月9日、11日の「3.11メモリアル・シンポジウム」制作にもご協力いただき、11日の哲学熟議には理事長の小中陽太郎さんも参加されます。

 事前申し込みは9日、11日いずれもこちらのメールアドレスgakugeifu@yahoo.co.jpまで、希望日とお名前、ご連絡先を明記してお申し込み下さい。当日いきなりでも残席があればご入場いただけますが、定員を超えた場合お入りいただけないことがありますので、予約申し込みをお勧めしています。

 今回はこの3月9日3.11メモリアル・シンポジウム「問われる大学知」にお寄せいただいた、米ハーバード大学ケネディ校のカレスタス・ジュマ教授のメッセージから引用して「3.11以降の日本に国際社会が期待するもの」について、お話ししたいと思います。

日本に欠けている「ガバナンス」

 ケニヤ出身のジュマ教授は科学・技術・イノベーションを通じた新興国の経済発展を具体的にリードしているハーバード・プロフェッサーです。

 アフリカ連合科学技術会議の共同議長やメリンダ&ビル・ゲイツ財団のアフリカ農業イノベーションプロジェクト責任者など、多くの重責を担っています。

 私は2007年、開高健賞の賞金を生かして招聘滞在したルワンダ共和国大統領府とのプロジェクト以来のお付き合いで、彼の卓越したリーダーシップと濃(こま)やかな気配りに常々大変お世話になっています。

 今回も、「3.11以降の日本の直面する最大の問題は何か?」とシンポジウム主催者で相談した際、黒川清教授(国会事故調委員長)から「日本のガバナンスは1923年(関東大震災)も1945年(太平洋戦争)も3.11も結局変わっていない、そういうことを正面から問題にしなくちゃ!」と強烈なご意見をいただきました。

 ではどうするかと考えて、カレスタス・ジュマ教授に相談することにしたものです。ちなみにガバナンスの語は訳し方が難しいですが、ここでは管理とかコントロール、統括といった意味合いも含め、企業や政府(ガバメント)がマトモに機能すること、と大くくりで考えていただくことにして先に進ませてください。