「あの日」からちょうど3年経ちました。今年の3月11日、私たちは「東京大学東日本大震災復興支援哲学会議」として「哲学熟議」を開催します。
残席当日参加も可能ですので、ご便利があい、ご興味の方が居られましたら、東京大学本郷キャンパス工学部2号館92番教室までどうぞお運び下さい。
3.11のメモリアルとして、私たちは3月9日日曜日にも、東京大学福武ホールでシンポジウムを開催しました。
東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(国会事故調)の黒川清委員長の、ガバナンス不在の日本の現状をめぐる提題、事故当時に文部科学副大臣として復興の最前線にあった鈴木寛東京大学公共政策大学院教授、福島で献身的に活動している早野龍五・理学部教授、塩沢昌農学部教授、坪倉正治南相馬総合病院医師らの懇切詳細な報告、西垣通(情報学)山脇直司(公共哲学)藤田康範(経済学)丸山文隆(哲学)らのメンバーとの、紳士的ではありますが、しかし極めて熱のこもった厳しい問いと答えの応酬がありました。
2011年末にスタートした活動の、2年間の中間総括シンポジウムでもありましたが、今後も相当長期間にわたって終わることのない問題状況に、腰を据えた取り組みを続けていきたいと思っています。
前回ご紹介したハーバード大学のカレタス・ジュマ教授からのメッセージも聴衆にしっかり受け止められ、国内外を問わず知のセクターの建設的な貢献が求められているのを痛感します。
事実3月9日も、黒川教授は1時半に会場を出て4時仙台着のスケジュール、早野教授に至っては一昨日までがドイツ、10日からはフランス原子力庁の招聘でパリというスケジュールの中、1日だけのために帰国してくださった形で、3.11以降、被災地はもとより、地球上のあらゆる場所、特に原発が今でも稼働している地域の人類の安全を守る英知が強く期待されています。
と言うのも、ここに参加されたすべての方は、オリジナルに仕事をしている方ばかりなのです。
「オリジナル」のオリジン
早野教授のご講演は「不要だが必須・・・私がBABYSCANを作った理由」のタイトルで、子供専用の内部被曝測定装置: ホールボディカウンターを作った経緯を詳細に語られました。
それを一言で言うと「不要だが必須」なのです。どういうことか? 科学者の目があれば、実は現在の福島で、検査され流通経路を通って購入された食品を口にしている限り子供たちに重篤な内部被曝がないことは、実は明らかです。
それでも・・・と、でも、多くのお母さんはおっしゃいます。うちの子が本当に大丈夫かどうかは、測ってみないと分からない、不安だ・・・と。
だから、この心の問題を含めて考えるとき、サイエンスとしては「不要」だけれど、民主主義的な社会でこの問題を克服していくためには「必須」のコミュニケーションアイテムとして、早野先生は「BABYSCAN」を創られました。
こうした「創る」ことができる人だけ、9日は登壇されました。農学部の塩沢先生は農業土壌の専門家で、放射線の専門家でも原発の専門家でもありません。