2010年5月、当局が地方の労働党員への配給を停止したため、特権層に属する朝鮮労働党員の68%が「商売をした経験がある」という。特権層の労働党員にとっても、「党」より「市場」である。

北朝鮮の崩壊は米中戦争を招く?

 韓国内では、張成沢処刑後に北朝鮮崩壊説が急速に拡大している。

 韓国の専門家たちは、「かつての東ドイツや改革開放当時の中国など、世界の社会主義国家の中で北朝鮮ほど短期間で市場化が進んだケースはなかった」とした上で、「北朝鮮の市場化は既に後戻りできない流れになっている。南北で統一されれば、北朝鮮は5年以内に市場経済体制に完全に転換し、韓国と1つの経済体を形成するだろう」としている。

 しかし、この見方は楽観的すぎないだろうか。米ジョンズ・ホプキンス大学のジョエル・ウイット教授は、「朝鮮半島が本来1つの国だと考えている韓国は、北朝鮮が崩壊したら統一されると信じているが、実際は北朝鮮と利害関係がある中国が動くため、韓国と中国の間で深刻な問題が生まれる。これに米国も介入せざるを得なくなるだろう」と警告を発している。

 1月15日付「中華網」も米中戦争が起きるリスクとして「韓国軍の指揮に米国は大きく関わっているため、米国は韓国を守る意味でも参戦せざるを得ない朝鮮半島問題が最も可能性が高い」としている。

 レーニンは「資本主義を破壊させる最良の方法は通貨を堕落させることである」と託宣を下したそうだが、レーニンの数少ない教え子が率先して通貨を堕落させ「国の屋台骨」を揺るがせているという状況はなんとも皮肉である。

 しかし、通貨の信認の失墜の問題は北朝鮮ばかりではなく世界全体の問題である。次回は世界の金融体制にとって「蟻の一穴」となったビットコイン(ネット上の仮想通貨)について論じてみたい。