「アメリカは素晴らしい国だ」――。この台詞で始まる映画『ゴッドファーザー』(1972年)を、いつの時代の米国民も愛してやまない。イタリアからニューヨークにたどり着いたヴィト・コルレオーネに、誰もが祖先の姿を重ね合わせるのだろう。
新天地でマフィアのボスに成り上がっていく――。コルレオーネの成功物語に描かれているのは、貧しくて教育を受けていない移民にさえチャンスが与えられる国「アメリカ」である。
だが今日、米国に移り住む外国人は高等教育を受け、高度な専門知識を身につけている。選りすぐりの優秀な移民を探し求めているのが、米国社会の現実なのだ。
シリコンバレーで働くエンジニアの半数は外国生まれ。とりわけインド出身者が目立ち、シリコンバレーの発展を支えてきた。
例えば著名なベンチャーキャピタリスト、ビノード・コスラはスタンフォード大学卒業後、サンマイクロシステムズを共同創業し、シリコンバレーをハイテクの街へと導いた。
マイクロソフトが本社を構えるシアトル郊外にも、同社に勤める多くのインド人が居住するため、大規模なインド人街が形成されている。
ウォール街の金融市場では、巨額の取引を続けるトレーダーに注目が集まる。しかしその背後で売買を指示するのは、コンピューターの複雑なプログラム。トレーダーの数十倍にも達する報酬を得て、マネーの運命を左右するアルゴリズムを書いているのは、数学に非凡な才能を備えた外国人であることが多い。
米国の大学で教鞭を執る教授にも、移民や外国人が山ほどいる。過去に「米国人」が受賞したノーベル賞の3分の1近くは、移民に与えられたものだ。
「万人に開かれた」アメリカは消滅
米国は「才能」の輸入大国である。
ナノテクノロジーや生命科学など最先端技術の世界では、突出した才能やスキルを持つ外国人の存在が欠かせない。著名ジャーナリストのトーマス・フリードマンをはじめ、米国の競争力の源泉は外国人だと指摘する者は多い。
各分野で競争の先頭に立つ企業や研究所、大学は、世界中で「Best and Brightest」を追い求めている。国籍などお構いなし。優秀な頭脳を持っているなら、米国人にしてしまえばよい。