韓国は旧正月(2014年は1月31日)を祝うため、年始の休日は1月1日だけだ。2日には、あちこちの企業で「始務式」が開かれた。ふだん公開の場でスピーチをする機会がほとんどない財閥総帥も、この日だけは1年間の経営目標を踏まえて訓示をする。2014年は「危機」「革新」「スピード」がキーワードとなった。

 1月2日。ソウル中心部にあるホテル新羅には続々と黒塗りの車が詰めかけた。サムスングループの旗艦ホテルで毎年恒例の「新年祝賀式典」が開かれるためだ。

 式典には、李健熙(イ・ゴンヒ)会長が長女でホテル新羅社長である李富真(イ・ブジン)社長に手を引かれながら姿を見せた。すぐ横には長男の李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長の姿もある。

 ホテル2階の大宴会場には、ソウル近郊に在籍するグループ役員1800人が参加した。取材陣も100人以上が詰めかけた。さらに国内外のサムスングループの拠点には通信回線を通して式典の模様が「生放送」された。

サムスングループ李健熙会長の訓示

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最も注目を浴びるのは、やはりサムスン〔AFPBB News

 最大の目玉は何と言っても李健熙会長の訓示だった。2014年は、あらかじめ録画した映像が会場の大型スクリーンを通して流された。

 サムスングループの中核企業であるサムスン電子は、2013年も過去最高の利益を更新したことが確実だ。世界のスマートフォン市場での圧倒的なシェアと堅調な半導体事業。世界シェア1位を維持したテレビ――。

 利益連動型ボーナス制度を導入しているサムスン電子は2013年末に8000億ウォン(1円=10ウォン)ものボーナスを大盤振る舞いした。

 訓示では、役員に感謝の意を伝えたが、「自画自賛」の内容などほとんどない。以下に紹介するように、いつもに増して「危機感」がにじみ出た内容だった。まずは、李健熙会長の訓示を少し長くなるが紹介しよう。


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 サムスンファミリーの皆さん。

 2014年の新しい朝が明けました。(略)

 昨年は世界的に低成長が続き、市場が萎縮するなかで、我々はグローバル企業と死活をかけて戦い、特許紛争も抱えることになりました。

 まったく油断もできない状況で、サムスンは投資を拡大し、技術開発に力を注ぎ、競争力を高めて良い成果を上げることができました。

 それぞれの現場で全力を挙げてくれた役員の皆さんに感謝を申し上げます。(略)