――日本の円借款で開発されたシハヌークビル港経済特別区がオープンし1年以上経過していますが、現時点では日系企業2社しか入居していない状態です。せっかくの日本支援で開発された経済特別区として、やはり日系企業に入居してほしいとは思いますが、日系企業にとって何らかのメリットのある誘致手段など検討されますか。

隈丸 まず、円借款での開発ということもあり、事業の主体はカンボジア政府であり、私たちのコントロール下にはありません。現在、公社という形でカンボジアサイドにより運営されています。
その公社と上手く意見交換しつつ、日本企業または他国の企業であっても、もっと活用されるように後押ししていきたいとは思います。シハヌークビル港経済特別区は他の経済特別区と比べても立地やインフラ整備など、メリットも多いと思います。
私たちとしては真剣に日本企業に検討してもらいたい場所でもありますので、今後、どうしたら関心を持ってもらえるのか検討していきたいですし、公社とも意見交換しながら働きかけをしていきたいと思っています。
――チャイナ・プラス・ワンの影響でカンボジアが注目されていますが、他国に対して優位な点はどこで、どういった産業がカンボジアに向いていますか。またプノンペン経済特別区は新しくラオスでも業務開始となりましたが、そこと比べてみていかがでしょうか。
隈丸 両国とも外資に対する様々な優遇策があり開放的でもあります。立地的にはタイやベトナムなどの隣国へのアクセスが改善されてきており、交通インフラも比較的悪くはないと考えています。また労働賃金に関しても周辺国と比べると安く、条件的には良いかと思います。
ただし、電気代が高いというのがカンボジアの問題でもありますから、電力をあまり使わない労働集約的な産業ならば比較的有利だと考えます。
ラオスに関して申しますと、カンボジアと比べると電気代が安く電力供給が安定しています。海がないという問題はありますが、業種によってはラオスという選択肢もあると思います。
ASEAN経済統合でより重要性を増すカンボジア
――2015年に向けて進められているASEAN(東南アジア諸国連合)経済統合により、カンボジアの状況も変わっていくと思います。今後、ASEAN諸国の中でのカンボジアの立ち位置、日本との関係はどのように変わっていくと思われますか。
隈丸 大きなメリットとして物流が円滑になること、企業にとっては1カ国を相手とするより地域として捉えたビジネスを行えるようになるということです。地域の中でどう生産、販売ネットワークを作るかなどの考慮が必要となります。
経済統合が進められていくうちにカンボジアのメリットも明確な形で出てくるはずです。多国籍企業が生産ネットワークを構築していく時にカンボジアの政策、労働賃金を含め、他国に比べてより有利な点を利用した企業の展開が可能になっていきます。