隈丸 そこから改革開放の時代。中国の改革開放は経済分野に施行したわけで政治的には専制の体制を維持しており、政治改革は限定的なものしかできていません。
カンボジアはその点が大きく異なり、開放された市場経済を施行するとともに政治的にもリベラルデモクラシー(自由民主制)を掲げて、自由と民主主義の発展と法治主義の進展を目指しています。
経済が発展するとともにどうしても格差は出てきます。十分な政治的な開放、改革がなされないと特権階級の存在が大きくなっていきます。特に経済が発展する過程においては、発展とともに必要な改革を行い、民主主義を進展させて法治主義として実施していくということをやっていかないと、いびつな社会となってしまいます。
カンボジアの発展も種々の社会問題、格差の問題、腐敗の問題などを生んでいます。そこで必要な改革をしっかり断行していかないと、どうしても歪みが生じ、格差が大きい社会になり、国民の一体感が失われます。
中国もカンボジアも似たような社会の諸矛盾を抱えていますが、カンボジアはより開放的な社会で、改革に期待が持てます。
今回(2013年7月)の選挙は平和的で非暴力で行われましたが、人民党が圧勝するという予想を裏切って国民の半数近くが救国党に投票しました。
現在、まだ救国党は抗議活動を続けており、政情が安定しているとは言い難い状態です注。これらを速やかに正常化しなければ国が分裂したようになってしまいます。対話による国民的和解が達成されることを強く望んでいます。
注 2013年7月に行われた総選挙では人民党の圧勝という大方の予測を裏切って救国党への投票数が半数近くとなった。救国党は開票結果に大規模な不正があったとし、不正を調査する機関の設置を要求している。
中・韓に出遅れた日本の民間投資をどう側面支援するか
――JETROプノンペン開設以降、急速に増え始めた民間投資ですが、韓国、中国と比べると、日本はカンボジアへの進出スピードが遅い感があります。一部では官民連携の強化が他国と比べると弱いと言われていますが、今後の連携強化を図っていく予定はありますか。

隈丸 投資面、貿易面において、中国、韓国と比べると日本のその規模は大きくはないというのが現状です。
日本企業の進出が慎重であるというのに加え、もう1つ大きな理由として日本企業から見るカンボジアへの投資環境はいまだに十分に整備されたものではないということもあります。
またカンボジアという国に対するイメージ問題もあります。現在はそれらが少しずつ変わりつつありますが、投資環境をさらに改善するために国(日本政府)としてやれることはやりたいと考えています。
その1つとして引き続きODAを提供して環境整備に役立てていくということ。もう1つはカンボジア政府に対して投資環境整備の努力を後押しするということです。また現在も行っている官民合同会議は非常に重要な役割を果たしており、様々な事項に関してカンボジア政府への働きかけを行っています。
最近は日本企業がカンボジアに対して大きな関心を持ってきていますので、的確な状況をアドバイスし、等身大のカンボジアを紹介することで、彼らのビジネスに協力していきたいと思います。