中国のCOP19交渉責任者、自国の「深刻な大気汚染」に遺憾

スモッグで覆われた中国東北部のハルビン市内をマスクをつけて歩く住民(2013年10月21日撮影)〔AFPBB News〕

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 第2に、環境規制の強化である。従来から環境基準を満たさない中小の鉄鋼メーカー等は整理の対象とされてきたが、それでも次々と新たな鉄鋼メーカーが新設されたため、過剰設備の解消は遅れていた。

 それは地元政府による環境規制の運用が甘かったことによるものである。その他の業種でも多くの企業が公害を垂れ流しながら、罰金を払うだけで操業を続けていると言われている。

 そこで今回は環境基準を満たしていない企業に対する法律執行を強化し、違反企業は厳罰に処する方針を掲げた。これが文字通り厳格実施されれば、多くの企業が操業停止に追い込まれる。しかし、この点についても地方政府、国有企業等の強い抵抗が予想されることから、政策の徹底実施は容易ではない。

 第3に、住宅問題の解決である。北京、上海、広州、深圳といった大都市では不動産価格が高騰しているため、一般庶民が普通に通勤可能な圏内で、ある程度快適に住める住宅を購入することは殆ど不可能である。これに対する国民の不満は極めて強い。

 その対策として来年は、公団等の低賃料賃貸住宅の供給を増やすとともに、主要大都市では住宅地比率の拡大、容積率の引き上げ等により住宅供給量を増加させる方針を掲げた。

 これらの政策措置は一定の効果を発揮すると期待できるが、主要大都市における住宅手当難の現状を抜本的に解決する決定打にはなり得ないと思われる。

 実は中国の住宅問題の根本的な原因は極端に大きい所得格差にある。今のような所得格差が存在する限り、一般庶民は大都市通勤圏で、ある程度快適に住める住宅を買えない状態が永遠に続く。

 問題の抜本的解決のためには、所得税の累進課税の最高税率の引き上げ(現在は日本の50%より低い45%)、現在は無税となっている相続税・贈与税の導入、現在は上海と重慶だけで課税されている不動産保有税の全国一律適用と税率の引き上げなどの施策が必要である。しかし、今回の決定にはそうした施策は盛り込まれていない。

 これらの抜本的解決策の導入には富裕層からの強い抵抗がある。そのためか、三中全会の決定で言及されたのは不動産保有税のみだった。しかも、それすら来年の政策には盛り込まれていない。

 以上3点の重要な改革メニューを見る限り、方針としては改革実行が掲げられているが、実際に具体的施策を実行に移すのは極めて難しい。住宅問題に至っては抜本的解決策が提示すらされていない。こうした状況を見ると、習近平政権の改革実行力は依然未知数であると言わざるを得ない。