先月中旬、習近平政権の政策運営の基本方針となる三中全会(正式名称は中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議)の決定が発表された。
それを受けて今月中旬に開催された中央経済工作会議において、来年の経済政策の基本方針が決定された。以下では来年の経済政策運営の主なポイントを紹介するとともに、構造改革上の課題について考える。
来年はマクロ経済の安定を保持しながら経済改革を推進
まず、大方針として、来年を全面的に改革を深化させる最初の年と位置付け、マクロ経済の安定を保持しながら各方面の経済改革を推進することが強調されている。従来のGDP成長=経済発展という単純な考え方を改め、経済発展の質を重視し、後遺症を伴わない発展速度を保つべきであるとした。
これはリーマンショック後の緊急経済対策によって巨額の不良債権が生まれたことへの反省に立ち、不動産開発やインフラ建設投資への融資に際しては、案件の中味を十分審査し、同じ過ちを繰り返してはならないとする戒めである。
同時に、本年上半期までに残高が急増したシャドーバンキングについても、7月以降当局が監視を強化しており、今後もこれを継続する方針を表明したものと考えられる。
マクロ経済政策としては、引き続き積極的な財政政策と穏健な金融政策を実施する。金融面では、金利の自由化および為替レート形成メカニズムの改革を目指すとしている。すでに今月から大手銀行に対して、上海銀行間市場金利連動型のCD(譲渡性預金)の発行が解禁された。近い将来為替レートについても規制緩和が実施されることになろう。
注目される改革メニューはいずれも難題
以上のようなマクロ経済政策に関する大方針に続いて、個別分野に関する改革メニューが掲げられている。このうち従来から問題の所在が明らかであるにもかかわらず解決が先送りされてきた重要課題として注目されるのは以下のポイントである。
第1に、過剰生産能力の解消への注力である。これについては三中全会の決定の中でとくに強調された、「資源配分において市場メカニズムに決定的な役割を担わせる」という方針を掲げている。
従来、鉄鋼、造船、ガラス、太陽光パネル等の産業では市場のニーズに合わない過剰な生産設備と製品の過剰在庫を抱えて業績が悪化していた。本来であれば、そうした企業は倒産させるか、即座に生産縮小と設備廃棄を実施すべきである。
しかし、それは雇用・税収両面において企業の地元の地域経済への悪影響が大きいことから、地方政府が企業に補助金を与えて操業を維持させるケースが多かった。それが過剰設備の処理を遅らせる原因となっていた。
今回の決定では、そうした行政による干渉を減らし、市場メカニズムに委ねて過剰設備・在庫の処理を進めるべきであるとしている。これは従来からわかりきっていた対策である。それが地元政府の抵抗により実施できていなかった。これまで続いてきた地元政府の抵抗がすぐに弱まるとは思えないことから、その実現は容易ではない。