その代表例として永田さんが挙げたのは、神奈川県藤沢市で介護施設「おたがいさん」などを運営する加藤忠相さんだ。加藤さんは、介護施設での勤務を経て25歳で起業。お年寄りを地域の“資源”として活用していく介護を実践している。実際、おたがいさんには子供から大人まで地域の人が集うたまり場的な存在だ。行政と連携して将来的には「おたがいさん」をフランチャイズ制にし、市内5カ所に増設していく計画もあるという。
一方で、福祉とはまったく別ジャンルにある音楽やアートとの融合を試みる人もいる。NPO法人Ubdobe(ウブドべ)の代表を務める岡勇樹さんだ。訪問介護ヘルパーとして働いた自らの経験を生かしながら、主に若者に向けた医療福祉啓発イベントを企画。クラブイベントの中で医療や福祉に目を向ける機会を作り、若者の興味の入口として発信している。
永田さんは、このように介護業界には従来のイメージからかけ離れた先進的な活動をしている人たちが続々と現れているのだという。
日本の介護が持つ、インバウンド市場の可能性
高齢化により、確実にその必要性と重要性が増していく介護業界。それは国内に限った話ではない。「近隣国に対しても、日本の介護は大きな役目を担っている」と永田さんは考える。
「介護福祉の先進国としてよく挙げられるのはスウェーデンですが、日本はここ20年でスウェーデンを超えるほど高齢化が進んで世界最速の最高齢国になりました。このような急激な高齢化は、中国や韓国などの近隣国でも続くと考えられています。ということは、日本が今作り上げている介護福祉モデルや福祉機器が、いずれはアジアで大きな価値を持つということです」(同)
たとえば中国の高齢者数は、2010年時点で1億1354万人。これが2050年には、3億3131万人まで増えると予想されている。また韓国でも、2010年の高齢化率は11.1%だが、2050年には34.9%まで上昇する見込みだ。おそかれ早かれ世界中が高齢化していくことにはあらがえない。
超高齢社会を控える中国や韓国だが、日本に比べると、介護技術といったソフトも、施設やシステムや介護機器といったハードもまだまだ充実しているとは言えない。その中で、一足先に作られた日本の介護システムや技術が世界へと輸出されることは想像に難くない。すでに、日本のシステムを取り入れる海外の施設も出てきているという。