今週の土曜、11月16日に私たちの東京での「トリスタンとイゾルデ」公演を、東京都港区芝公園の聖アンデレ教会で行います。

 すでに残券僅少となっていますが、月末の11月30日、また12月1日の2日連続で、同じく港区三田の慶応義塾大学北館ホールでも上演いたします。関連にご興味の方にはぜひお運び下さい。

 この原稿を書いている11月12日には東京アートミュージアムで公開リハーサルを行いました。本日は、私たちが採用している「劇的オラトリオ方式」の狙いからお話を始めて、ドイツはハレで活躍する市川克明さんとのコラボレーションの続きをご紹介したいと思います。

「劇的オラトリオ」とは?

 いま上で触れた「劇的オラトリオ」とはどのようなものでしょうか?

 私が最初にこの言葉を知ったのは20世紀スイスの作曲家アルチュール・オネゲルの作品「火刑台上のジャンヌ・ダルク」を通じてでした。

 この作品には思い出があります。私が20代の頃、小澤征爾さんの指揮でこの作品が上演されました。この公演自体には私は参加していないのですが、指揮者として関係していた合唱団が出ていた縁で、上演の裏側を少し覗いたうえで本番を見る・聴くことができました。

 「オラトリオ」は歌のある大規模な作品形式で、ハイドンの「天地創造」のように気宇壮大な作品が多数知られます。

 第2次世界大戦中に作曲されたオネゲルの「火刑台上のジャンヌ・ダルク」はフランス救国の女性勇者ジャンヌが捕らえられ、いままさに火刑に処されんとするドラマティックな状況が舞台として演出されています。

 そして舞台上にオーケストラが配置され、譜面台も立てられ、「音楽としてドラマを演じる」ようなスタイルが取られています。

 こういう「劇的オラトリオ」のような編成、演出の舞台が、いまから25~30年ほど前の日本では立て続けに上演され、当時駆け出し修業中だった私は強い印象を持ったものです。

 オルフの世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ」はベートーヴェンの第九交響曲のように元来は舞台上にオーケストラと独唱、合唱が配置されて演奏される音楽作品ですが、それに演出をつけた舞台上演が試みられたりもしました。