1730年、コメの価格変動リスクを回避するため、大阪・堂島で先物取引が始まった。シカゴやロンドンに先んじて、世界初の先物市場が日本で誕生したのである。

日経平均が大幅続落、前週末比4.53%安

国債先物取引、システム高速化を目指す東証(参考写真)〔AFPBB News

 それから280年――。コメの先物取引は金融派生商品(デリバティブ)へ発展を遂げ、東京証券取引所に上場する国債先物取引は価格変動のリスクヘッジ手段となっている。2011年にも東証は「ライフ・コネクト」というシステムを国債先物に導入し、ニューヨーク証券取引所(NYSE)やロンドン国際金融先物取引所(LIFFE)とほぼ同じ規格に移行する。

 現行のシステムは取引注文の処理速度が海外製に比べて遅く、一部の海外投資家がその改善を要求していた。彼らは機械的に相場の解析を行い、最適化した取引を自動的に執行しながら最大の収益を追求する。

 最近、このCTA(Commodity Trading Advisor=商品投資顧問業者)と呼ばれる海外投資家が存在感を増しており、東証は彼らを国債先物市場に取り込んで売買高を膨らませ、取引所に落ちる手数料の拡大を狙っている。

 ところが、国内の投資家や証券会社からは現行システムの処理速度に対する不満はそれほど聞かれないという(無論、最適化執行システムを導入している投資家からは不満がないわけではない)。

利益追求を優先する東証、国債先物市場は「国家的インフラ」のはずだが・・・

国債管理政策を慎重に展開する財務省(撮影・前田せいめい)

 巨額の財政赤字を埋めるため大量発行される日本国債は、経常黒字を背景に今のところ何とか消化されている。日本国債の市場の特徴はよく管理されている点にある。発行計画などについて財務省理財局が流通市場の意見を採り入れ、変動率(ボラティリティー)が拡大しないよう努めていると評価してよい。

 それによって国債が超低金利で発行され、利払い負担が軽減されている側面は否定できない。10年物国債でドイツの2.6%前後、米国の3%前後と比較すると、日本の1.1%は格段に低い。

 ところで、先物市場はリスクを引き受ける側とそれを回避する側の双方が存在することで成り立つ。日本では企業、家計の両部門がともに資金余剰であり、且つ経常収支が黒字だからこそ、国債発行額の95%程度まで国内資金で賄えている。ということは、海外投資家の国債先物市場での役割はリスクの引き受け手にほかならない。