8月24日夜(日本時間25日未明)の海外市場で、円相場は1ドル=83円台をつけ、1995年6月以来、15年2カ月ぶりの水準に突入した。対ユーロでも9年ぶりの105円台となった。

非常事態が分かっていない!

「こんな無策な政府と日銀ではだめだ」
(麻生渡・福岡県知事=全国知事会会長)

「国は腰を据えて(市場介入などを)やるべきだ」
(斉藤惇・東京証券取引所社長)

「実態経済への悪影響が懸念されるにもかかわらず、政府・日銀とも積極的に対処しようとする意志が見えない」
(小林喜光・三菱ケミカルホールディングス社長)

「(菅直人首相は)国家の非常事態が分かっていない」
(渡辺喜美・みんなの党代表)

 独歩高の様相を呈している円相場に口先介入を繰り返すだけで、具体策を打ち出せないでいる菅政権や日銀に対して、政財界からは不満が噴出している。

 世界同時不況の引き金となったリーマン・ショックから2年。外需主導でようやく立ち直りかけてきた日本経済に円高が冷や水を浴びせるのは確実。

7月の貿易黒字、前年比86.6%減 原油高響く

トヨタは1円円高で300億円の営業利益が吹っ飛ぶ〔AFPBB News

 直接的な打撃を受けるのは輸出産業だ。トヨタ自動車は対ドルで1円円高が進むと、年間で300億円の営業利益が吹き飛ぶ。2011年3月期のトヨタの想定為替レートは1ドル=90円。このままだと、単純計算で通年営業利益予想(3300億円)のうち2100億円の利益が消える。円高で輸出企業が国内から海外へと生産拠点を移す空洞化が加速すると懸念する声も高まっている。

 大和総研の試算によると、10円円高が進むと、悪影響が本格化する来年度の実質GDP(国内総生産)成長率は0.6%押し下げられる。2004年3月を最後に行われていない円売りドル買い介入や、日銀の金融緩和、財政出動を伴う政府の景気対策を求める悲鳴が相次ぐ。

世界は円高を望んでいる

 しかし、残念ながら、円高阻止は難しい。

 現在、進行中の円高の原因は円にあるのではなく、ドルやユーロの問題だからだ。日本だけで対策を打ったところで、根本的な解決策になどならない。