オバマ大統領の支持率、米国より西欧とアジアで高い数字

輸出振興のため、内心はドル安歓迎〔AFPBB News〕

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 世界経済を主導する米国は二番底の瀬戸際にある。欧州は、ギリシャ・ショックに端を発した金融危機を完全に封じ込めてはいない。米国はバラク・オバマ大統領が輸出振興策を打ち出し、ユーロ圏の盟主であるドイツも外需主導の成長を目論む。米欧はドルとユーロの下落を「黙認」というよりは、内心、大いに「歓迎」しているのだ。

 ドル安は、長年の米国の構造的問題を反映した結果でもある。米連邦準備制度理事会(FRB)にエコノミストとして勤務した経験もある米大手格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)のデビッド・ウィス主任エコノミストは、ドル安の背景として慢性的な経常収支赤字と基軸通貨としてのドルの地位低下を挙げている。

 2010年1~3月期の米経常収支の赤字は対GDP比で3.0%となり、2009年10~12月から0.2ポイント悪化した。当面の安全資産として、経常黒字国・日本の円に資金が集まるのは不思議ではない。

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もはや、ドルの代替通貨ではない?〔AFPBB News

 外貨準備を貯め込んでいる中国や石油輸出国機構(OPEC)は、リーマン・ショック後、基軸通貨ドルが暴落するリスクを懸念し、ドル建て資産を徐々に減らしてきた。欧州金融危機が起こるまではユーロがドルの代替通貨だったが、今では「英ポンド、カナダ・ドル、日本円」(ウィス氏)に対象が移っている。

 振り返ってみれば、1995年の円高局面でも、メキシコ通貨危機をきっかけとしたドル暴落の懸念から、アジアの中央銀行や通貨当局がドルから日本円に外貨準備をシフトさせていた。この流れは15年にわたり脈々と続いているのだ。

単独介入は気休めに過ぎない

 円は、こうした世界情勢を反映して今の水準に至っているのであり、日本一人が小手先の円高対策を繰り出したとしても、非ドル・非ユーロという大きな流れに逆らうのは難しい。

 為替相場のトレンドを変えるには、国際的な政策協調が必要だ。マクロ経済政策で歩調を合わせ、協調介入に踏み切ることができれば、市場にインパクトを与えることができる。しかし、米欧各国はドル安、ユーロ安を心地よく感じているのだ。先進7カ国(G7)による協調介入など望むべくもない。

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「蜜月」関係を築いた2人〔AFPBB News

 2003~04年に日本は円売りドル買いの単独介入を実施し、1ドル=100円割れを阻止したことがある。この時は、米政府が日本発の世界的なデフレ不況を恐れていたし、小泉純一郎首相─ジョージ・ブッシュ大統領という当時の日米首脳の蜜月関係もあって、日本の介入を黙認する「協調」があった。

 だが今は、不況脱出に躍起になっている米国は輸出振興を優先。日米関係も冷え込んでいる。また人民元を安く維持するための中国の為替操作を批判している手前、日本だけを黙認するわけにもいかない。