誰でも子どものころに一度は読んだことがある『トム・ソーヤーの冒険』の著者である米国人作家のマーク・トウェインは無類の投資好きだった。特許権や株など様々なものにカネをつぎ込んでいたそうだ。その経験から「10月は株式投資をするのには危険すぎる月だ」という相場格言を残している。
なるほど、歴史をひもといてみると、過去10月には株式市場は何度も波乱に襲われており、マーク・トウェインの言葉は信実を言い当てている。
しかし、マーク・トウェインは「他にも危険な月として、7月、1月、9月、4月、11月、5月、3月、6月、2月、8月を挙げることができる。そして、なんと言っても12月だ」という言葉を残している。
残念ながら、文才と投資のセンスには全く関連性が無いのか? それとも、「投資は常に危険である」という悟りの境地に達していたのか──はさだかではない。
株投資の最良の年は1月、猛暑で相場は夏枯れ
マーク・トウェインほどの悟りに至っていない身としては、株式市場はおしなべていつでも危険なわけではなく、「季節性」がある──と信ずる気持ちが強い。マーク・トウェインが危険な月の1つに挙げている1月は1年の中で最良の月であると考えているし、「夏枯れ」という言葉通り、市場参加者が少なくなりがちな真夏の相場はパッとしないことが多い。
ことに、今年の8月は、3年ぶりの記録的な猛暑のせいか、相場は一段とヘタっている。8月前半の段階で東証1部の売買代金の1日平均は約1兆1000億円と、かろうじて1兆円の大台をキープしている。しかし、このまま夏バテ状態が続けば、7月の1兆1513億円を更に下回り2カ月連続で今年最低を更新しそうだ。
マーク・トウェインの警告にある通り、8月、9月、10月の3カ月も株式投資にとって最も厳しい季節だ。
2009年のように世界各国の中央銀行が目をむくような流動性供給を続けた年などは例外中の例外。郵政解散による総選挙で自民党が圧勝し、構造改革が急ピッチで進むと期待した海外投資家の買いが猛烈に流れ込んできた2005年の東京市場も歴史的な例外である。マーケットが盛り上がる夏は滅多にない──と心しておくべきである。
冒険の語義は「険しきを冒す」。危ないところに敢えて入っていくという意味だが、冒険はトム・ソーヤに任せて、この季節、素人は株に近づかないに越したことはない。