先週は高校生以下の生徒むけ「ワンコイン・オペラ」の取り組みをご紹介しました。今週はさらに進んで、ノーコインのご紹介です。つまり「タダ」無料のイベントを、その舞台裏からお話いたしましょう。
本番にワンコインの「学生ジーンズシート」を導入した東京アートオペラ「トリスタンとイゾルデ」は、公演に先立って2回、来週10月1日火曜日の18時から、と来月11月12日、やはり火曜日の18時から、入場フリーの公開リハーサルを調布市仙川の東京アートミュージアムで開きます。
なぜフリーなのか?
余計な制作費がかからないからにほかなりません。つまり元来予定しているリハーサルの一部を公開し、リスナーと出演者の交流の場を設ける、ヨーロッパではごく普通に見られるプランを日本でもぜひやりましょう、という企画です。
「ロザリオのマリア観音」・・・なぜ制作費がかからないか
10月1日火曜日から6日日曜日まで、東京アートミュージアムと同じ敷地内にあるプラザギャラリー南パティオで、一般財団法人プラザ財団(プラザ・ファンデーション)のキックオフ企画「踏み絵とダモイ」展を開催します。入場無料です。「踏み絵」展示物は旧長崎南山手十六番館収蔵品の中から、担当者である小中陽太郎理事長が「野生的な直感と独断」で選びました。
率直に、鑑定書などなく選んでいるので、もしかすると贋作品が入っているのかもしれません。でも、それでいいと思っているのです。と言うのも、鑑定の目で「真贋」を疑うのでなく、同じ展示物を「心眼」で見た作家・遠藤周作が、ここから小説「沈黙」を発想し、完成しているのですから。
私たちに必要なのは、むしろそういうファンタジー、創造的な想像力ではないか、そんな風に思うわけです。そこでプラザ・ファンデーション最初の企画として、こんなことを考えてみたわけです。
イマジナリーであることで、事実よりむしろ真実に迫ることが、いまの日本の私たちの心にとって、大切なことではないかと考え「旧・南山手十六番館収蔵・伝切支丹史料から」として、長崎関連については真贋ならぬ心眼の展示やギャラリートークを準備しています。
この初日に合わせて上記「トリスタン」の公開リハーサルを入れました。調布経済新聞もご紹介下さっています。
最初にちょっと、実際に展示する品物からお目にかけましょう。貴重な踏み絵やキリシタン遺物の展覧会にどうして制作費がかからないかというと、全部手で作ってるからなんですね、私たちが・・・。
切支丹関連は、率直に贋作なども多いとのことで、私たちは美術鑑定の専門家ではないので、本当の真贋は分かりません。以下は旧長崎南山手十六番館収蔵史料から拝借してきた切支丹遺物という出発点で、もろもろ想像力を逞しくしてみましょう、ということで考えています。
昨晩、遺物のオーナーIさんのお宅に、小中さんと私とでお伺いして貴重な品々をお借りしてきました。準備途上のそれらをちょっとごらんに入れましょう
例えば、これ(右の写真)はそうとうヤバい品物です。
見たところ、白磁の実に美しい観音様の像です。ちょっと珍しいのは、首から何かかけてますね。で、観音様の背中を見てみると・・・。
あら~、これはいけません。世が世なら持ってるだけでも明らかにアウト、命がありません。貼り付け獄門か逆さ貼り付けか火あぶりか分かりませんが、首と胴体が無事にくっついていない品物です。
ご禁制の十字架が堂々と刻印して焼かれている。一見すると仏像ですが、実はこれ「ロザリオのマリア観音」だったわけですね。
で、この1つの像だけでも、よくよく見ると、いろいろなことが分かります。例えばこれ、わざわざ十字を背中に隠しているわけですから、当然、切支丹バテレンの類が禁止されたあとになってから作られたものだと分かります。
が、この超高品質の白磁はどうでしょう!
有田や伊万里の優れた技術がなければ絶対に作ることができません。
で、こんな危ないものが作られているということは、つまり肥前の陶器製作者に隠れキリシタンと通じる人・・・と言うか、そのものずばり隠れキリシタンがいた可能性が高いと自ずから知れます。