ソウルに期間限定で開店した「アサヒスーパードライエクストラコールドバー」

 福島第一原子力発電所の事故による放射能汚染を警戒して日本産食品への抵抗感が強まっている韓国で、日本産ビールの快進撃が止まらない。

 アサヒビールは販売を急増させ、2013年に韓国内のビール市場でのシェアが1%に肉薄する勢いだ。

 2013年9月9日午後8時。ソウル・江南(カンナム)のサムスン電子本社ビルの正面にあるビアホールは満席だった。8月初めに「9月いっぱいの限定営業」として開店したアサヒビールの「スーパードライエクストラコールドバー」だ。

韓国で大人気のアサヒビール、キリンやサントリーも続々本格進出

 すべて立ち席で、メニューは「エクストラコールド」と同黒ビール、簡単なつまみだけ。それでもどんどん客が入ってくる。8月末に韓国人の知人2人と夜10時前に来た時は行列ができていた。

 「日本のビールはやっぱり美味しいんだよね」――。8月に一緒に行った知人は、夕食の席で生ビールと焼酎を飲んだにもかかわらず、黒ビールをあっという間に5杯も飲んでみせた。

 アサヒビールは2004年にロッテグループと合弁会社を設立して韓国市場での本格的なビール販売に乗り出した。すべて日本からの輸入だが、順調に販売を伸ばしている。2013年春には、合弁会社の持ち株比率を20%から34%にまで引き上げている。

 この間、ウォンに対して円高が進み、ビールの輸入ビジネスには決して順風というわけではなかった。韓国の大衆的な飲食店での国産の生ビールの価格は3000ウォン(1円=11ウォン)前後から。これに対して、2012年半ばまで続いた超円高の時期には「スーパードライ」の価格は3倍に当たる9000ウォンにも達していた(現在は下がっている)。

 それでも人気で、知名度も高まり、アサヒビールのシェアは1%近くに達する勢いだ。「1ブランドの輸入ビールのシェアが1%に達するのは驚異的な水準」(韓国紙デスク)という。

 アサヒビールの好調な販売に刺激を受けてか、ここ数年間で、日本の他社も相次いで韓国で本格的なビール販売に乗り出している。