東海道新幹線の熱海駅からほど近い「熱海断食道場」(入会金1万円・1泊1万円)。故・牧内泰道氏が開設したこの道場には、かつて不治の病を抱えた患者が、数多く訪れていたという。

 牧内氏が昨年亡くなった後、一時休業していたこの道場が、「心と体のデトックス」を標榜し、この夏、新しくオープンした。

 たまたま家族に誘われた私は、ダイエットになればいいかなというくらいの軽い気持ちで、お盆休みに5日間滞在したのだが、思いのほか気付かされることが多かった。そこで体験したこと、感じたことを記したい。

海を望む木造建築。エアコンなしで過ごす貴重な時間

道場の入口に立つ門(写真提供:筆者、以下同)

 道場は、相模湾を一望できる高台に位置し、緑に囲まれた総ひのき造りの木造建築だ。

 エアコンはなく、海と山の間を行ったり来たりする自然の風を楽しむのがここでの過ごし方と言えよう。

 実は、道場建設の際には、大量の炭を地面に埋めたり、電気石と言われるトルマリンを活用したり、いろいろと工夫がされたそうだ。

海を望む客室。通り抜ける風が心地よい

 しかし、そんなことを知らなくても、窓から海を眺め、床に寝転がり、風を感じるだけで気持ちが良くなってくる。

 お風呂は熱海の天然温泉で、蛇口を操作して好きな熱さに調節できる。循環設備などはないので、間違いなく「源泉かけ流し」である。贅沢な楽しみだ。

 夜は早めに布団に入り、身体をゆっくり休めよう。翌朝、海から昇る朝日と、鳥のさえずりで自然に目を覚ますことになる。都会では味わえないこの感覚を「しあわせ」と思える人なら、この道場を楽しめるのではと思う。 

「半断食」で内臓を休め、毒素の排出を促進

 この道場では、固形物の摂取を全てカットする完全断食ではなく「半断食」を推奨している。

半断食メニューの夕食

 半断食とは、マクロビオティック(食事療法の一種)の考え方に基づく少量の食事を摂取するプログラム。疲労した内臓(胃、腸や肝臓、腎臓など)を休め、体内の毒素の排出(デトックス)を促進するというもの。

 食事は、少量の玄米に味噌汁、おかず数種類で構成される。自家農園で作られた野菜や、信頼のおけるところから仕入れられた素材や材料が丁寧に調理されて、出されてくる。動物性の肉、卵、乳製品や、砂糖などは一切使用していない。