──営業活動を自分たちで行うようにしたのですか。
桂木 県内の企業や老人会などに足を運び、ダイレクトな営業をするようにしました。それまでは客先への営業は旅行業者が行くものであって、旅館が行くものではありませんでした。旅館にとっての営業とは旅行業者に顔を出すことだったんです。
──自分たちで客先に行くと、旅行業者から文句を言われたりしませんでしたか。
桂木 それはもう言われましたね。お前たちの旅館はもう扱ってやらないぞと言われることもありました。
──それでも自分たちで商品をつくって自分たちで売りたかった。
桂木 それまでは、旅館のランクも値段も旅行業者が決めるものだったんです。旅行業者が決めたランクを押しつけられたくない、自分たちで値段を決めたい、というのはありましたよね。
カニの新しい食べ方を発明
──ダイレクト営業の他に何をしましたか。
桂木 メディアへの出稿です。まず、リクルートの「じゃらん」など旅行雑誌への出稿を始めました。続いてインターネットを使った集客を始めました。ネットの活用は90年代後半から着手していますから、相当早い方だったと思います。
まず自社サイトを立ち上げ、続いて「じゃらんネット」や「楽天トラベル」といったネットエージェントを通して集客するようになりました。もちろん手数料は取られますが、従来の旅行業者よりは安く済みます。
──ネットで集客するときの工夫はありますか
桂木 ネットはタイムリーな情報を速やかに発信できます。例えば梅雨ならば、「梅雨に入りました。大浴場に入ってさっぱりしましょう」とか、夏ならば夏の料理をいち早く味わってもらうプランをつくるとか。そうしたタイムリーな情報をできるだけこまめに流すようにしています。
──常に変化しているということを発信する。
桂木 そうですね。ただそこで忘れてはならないのは、常にお客様の視点に立って変化するということです。自分本位にならないことが大切です。
例えば、うちでは、カニの刺身をカニみそにつけて食べる料理を出しているんですが、実は地元にそんな食べ方はないんですよ。こちらではみんなカニは湯がいて食べるんです。最初は、うちもお客様にそうやって出していました。でも、新鮮なお刺身で食べたいという意見が多くあったので、刺身で食べていただくことにしたんです。