税方式の公営サービスが主体となっているスウェーデンの医療は非効率に見える。病気になっても、実際に医師に診察してもらうのは至難の業だ。
子供が病気の際、診療所に予約を入れようと電話すると、電話口で長く待たされた後、「安静にして、水分をたくさんとって・・・」とアドバイスを受けるだけである。実際に医師の診察室まで到達できる子供はごく少数だ。
中央政府や自治体は「待ち時間短縮」の成果を誇るが・・・
これは以前にも書いたが、当時3歳の長男が怪我を負った時、病院に連れて行ったが何の処置も受けないまま真夜中まで放置された。その後全身麻酔され、実際に顔面の縫合手術を受けたのは翌日の早朝だ(「スウェーデン・モデルは成功か失敗か」参照)。
その後、2006年に交代した新政権は、患者が診察を受けるまでの待ち時間を一定時間以内に短縮した医療機関に対して奨励金を交付する制度を導入した。
現在の交付の基準は、新規外来患者の70%が60日以内に診察を受けた場合となっている。患者の割合が80%を超えるとさらに額が増える。
この制度の導入によって、一見状況はかなり改善したように見える。
政府をはじめ、各地域の首長らは「わが自治体の達成状況は良好だ。今や、多くの人が長く待たずに診察を受けられるようになった」と大喜びしている。
確かに、交付金を受けられる自治体の財政状況はある程度改善したのだろう。だが医療現場の状況は本当に改善したのか。
この2月、スウェーデンの全国紙ダーゲンス・ニーへテルに掲載された「何がグスタフ・Bを殺したか」という記事が多くの反響を呼んだ。
「栄養を供給されず、入院中に餓死した患者」
記事を書いたマチェイ・ツァレンバ記者は、いくつかの例を挙げて「転換するスウェーデンの医療制度」について説明している*1。
最初に挙げられた例は、「栄養を供給されず、入院中に餓死した患者」だ。
グスタフ・B氏はがんの診断を受けて入院し、113日後に病院で死亡した。しかし彼の直接の死因はがんではなかったらしい。
これに気がついたのは、B氏の妻だ。
*1=http://www.dn.se/kultur-noje/vad-var-det-som-dodade-herr-b