(1)部門別の早期退職者数および割合

 本社、開発センター、前工程工場、後工程工場別の早期退職前の社員数、早期退職者数、およびその割合を図1に示す。

図1 ルネサスの部門別早期退職者数および割合
(出所:表1を基に筆者作成)

 早期退職者数の多い部門の順から、前工程(3556人)、開発(1210人)、後工程(1060人)、本社(425人)となっている。

 一方、部門別の早期退職者の割合は、その大きい順から、後工程(29.9%)、前工程(25.6%)、本社(18.6%)、開発(17.4%)となっている。

 結果的に、工場所属の社員、特に後工程の社員が早期退職した割合が最も大きい。それに比べて、本社や開発センターの社員が早期退職した割合は小さい。

 早期退職者が本当に自ら進んで辞めたのか、会社から何らかの圧力があって辞めたのかは、私には分からない。しかし、工場(特に後工程)に早期退職者が多いことから、何らかの会社の意図が働いていたと思わざるを得ない。つまり、後工程は見捨てられたということ、開発者は残すということ、本社には部長職以上の幹部が多数いるため自分の身を守ったのではないかということだ。本社について、もしこの推測が事実なら、許し難いことである。彼らこそ真っ先に辞めるべき存在だからだ。

(2)旧所属別早期退職者数および割合

 次に、旧三菱電機、旧日立、旧NEC別の早期退職前の社員数、早期退職者数、およびその割合を図2に示す。これほど明確に出身会社ごとの傾向が表れるとは思わなかった。

図2 ルネサスの出身会社別早期退職者数および割合
(出所:表1を基に筆者作成)

 旧三菱は、早期退職前社員数、早期退職者数、その割合、すべてにわたって最小である。特に不思議なのは、早期退職前の社員数が3674人と、旧NEC1万1150人および旧日立9530人の3分の1程度しかいないことだ。

 この理由について、関係者に事情を聴いてみたところ、ルネサスに所属していた旧三菱社員の多くが、再び三菱に戻ってしまったとのことである。なぜなら、三菱本体でパワーデバイスを開発、量産しており、その人員を強化するためだという。三菱は、ルネサスを見捨てたのかもしれない。