一方、早期退職前社員数、早期退職者数、その割合ともに最大となっているのは旧NECである。旧NEC社員はその31.4%、実に3501人が早期退職した。工場別に見ても、山口工場716人(57.7%)、滋賀工場900人(47.7%)、福井工場350人(50%)と約半数が辞めた事業所がある。玉川・相模原の開発センターでも、645人(19%)が辞めている。

 この理由を旧ルネサス テクノロジの関係者に聞いたところ、次のような回答が得られた。旧NECの社員は、プライドが高く、かつ被害者意識が強いとのことだ。

 プライドが高いということについては、私にも心当たりがある。NECは、1992年にインテルに首位の座を奪われるまで、6年以上、半導体売上高で世界一だった。日本の半導体メーカーで世界一になったのはNECしかない。ここにNECのプライドの源泉がある。

 2000年にNECと日立の合弁会社エルピーダが設立されて、1年間、NECと一緒に仕事をしたが、彼らはいつも上から目線で日立社員を見下ろしていた。2010年にルネサスと経営統合したときも恐らくルネサスを見下ろしていたことだろう。

 そして被害者意識。何で世界一の俺たちが、赤字のルネサスと一緒にならなければならないのか? あんな所とくっついたお蔭で、KKRだ、革新機構だ、7500人のリストラだとぐちゃぐちゃになってしまったじゃないか。そもそも、マイコン事業では敵だったのだ。あんな奴らとは一緒にできない・・・。おそらくこのような感情を持っている旧NEC社員は多いのではないか?

マイコンの拠点は旧日立の那珂工場

 結局、旧三菱社員の多くはルネサスを見捨てて三菱に舞い戻り、旧NEC社員はルネサスに馴染めずその多くが早期退職した。その中間的な立場にいるのは旧日立社員である。

 ルネサスのマイコンの拠点は、旧日立の那珂工場である。どこが買収しようとも、誰が経営者になろうとも、ルネサスの再建はマイコンを中心に行うことは確実である。したがって、ここは旧日立社員に那珂工場で頑張ってもらうしかない。