その転換点は、2012年に発売された新しい据え置き型ゲーム機「Wii U」の好調な滑り出しと、それまでの業績不振要因のひとつであった携帯型ゲーム機「3DS」の好転だ。
発売から2年近くが経とうとしている中、本体の値下げなどを敢行しても不振が続き、販売見込みに遠く及ばなかった「3DS」の売れ行きが伸び始めたのだ。そのきっかけは、2012年11月に発売された同機向けのソフト「とびだせ どうぶつの森」のヒットにある。
このソフトは、どうぶつたちが暮らす森でさまざまなイベントをゆったりと楽しむゲームだ。新作では、村長となって村を運営できる機能や、他のユーザーの村と互いに行き来する交流機能が追加され、発売からわずか1カ月半強で国内で約230万本が売れる大ヒットになった。そして、これに引っ張られるかたちで本体の販売も好転し始めた。
岩田聡社長の次の発言から、このソフトの大ヒットにソーシャルメディアとスマートフォンが大きく貢献していることが窺える。
「今回、こんなこともできるのか、ここまでやるかっていうくらい、さまざまな仕掛けを本当にたくさん入れてある。加えて、例えばお客さん自身が絵を描いて面白いデザインの家具を作れるみたいなことをいろんなところに反映できるようにした結果、我々が用意した仕組みと、お客さんが発揮したクリエイティビティーのかけ算になって、すごく面白いものになった。それを広めてくれたのは、ソーシャルメディアであり、スマホなんです。今回、どうぶつの森を大人の女性に売ってくれたのは、間違いなくスマホなんですよ」(前掲の記事より引用)
それまでは任天堂を苦境に陥れた元凶の如き存在であったソーシャルメディアとスマートフォンが、「味方に転じた」ような印象だ。
具体的には、次のような形でソーシャルメディアとスマートフォンがその販売に寄与しているという。
「今回のどうぶつの森はスクリーンショットをどこでも撮れますから、それをソーシャルメディアにあげて、こんなことをやったよ、わーってみんなで盛り上がるみたいなことが起きている。例えばツイッターでフォローしている人がどうぶつの森についてすごく熱く語っていて、それを見て興味を持ち、やってみたら面白かったというような方がたくさんいらっしゃるんです」(前掲の記事より引用)
ソフトの魅力がシェア、伝搬される上で、ここに挙がっているツイッターだけではなく、次のように動画共有サイトも大きな貢献を果たしている。
「我々、動画サイトを通じて任天堂の魅力をお伝えする『ニンテンドーダイレクト』という動画配信をしているんですけれど、今回のどうぶつの森を紹介した動画は、ユーチューブで160万回も再生されている。しかもその過半数がスマートデバイスからの視聴なんですよ。
ソーシャルメディアで話題になり、この動画を見ると分かるよとなり、これはすごいってなってご購入いただけた。だいたい3分間のミュージックビデオじゃなくて、開発者がだらだらとゲームについてしゃべっている47分の動画を160万回も見ていただけたっていうのは、ちょっとあり得ないこと、異常なことだと思います」(前掲の記事より引用)