2013年が幕を開けた。

 今年はソーシャルメディア、デジタルテクノロジーにどのような進化が起こり、それが社会へどのような影響を及ぼすことになるのだろうか。

ソーシャルメディアを味方にするために必要なことは何か

 以前、こんなエピソードがあった。

 初めて利用したある飲食店にて、食事終了後にそのオーナーと雑談する機会があった。そのお店のオーナーはなかなかの職人気質な方で、食材の調達にとてもこだわり、それを丹念に実践していた。実際とても美味しいお店で、そのクオリティの高さは味という一番分かりやすい形でくっきりと浮かび上がっている。

 その雑談のふとした流れで、「最近はクチコミサイトやツイッターみたいなもので評判が一人歩きし、中には半ば嫌がらせのような書き込みや事実と違う毀損を一方的にされるような飲食店もあり、厄介な時代になったものですよね」とオーナーが漏らした。

 どうも、同業者の間でしばしばその手の話題になるらしい。 その方は、そもそもネット自体は門外漢であるものの、最近はその価値も十分に認めてはいることを付け加えていた。

 「ネットの力は認めたところで、結局はいかに美味しい料理を出すか、それに尽きるんですよね」

 このお店は、さほど宣伝もしていないし、立地もよろしくないものの(というよりむしろ悪い)、かなりの繁盛店になっている。その鍵となっているのが、実際に足を運んだお客の好意的なクチコミであることを、オーナーも十分に認識している。

 あれからさらにソーシャルメディアを利用する人の数もアクティビティも増している中で、あのお店は相変わらず特に自店のソーシャルメディアアカウントを持たずに、しかしソーシャルメディアを味方につけて人気店であり続けている。

 料理の美味しさとそれに対するお店の真摯なスタンス、顧客へのホスピタリティそのものが、ソーシャルの中で“勝手に”伝搬されている状態だ。このお店は自らのソーシャルメディア活用こそまだ未着手だが、それでもとても「ソーシャル的」だと、僕は感じている。

任天堂にとって「塞翁が馬」だったソーシャルメディア

 年初に、重要なことを示唆している任天堂の岩田社長のインタビュー(参照:1月6日付 日本経済新聞「ソーシャル革命の裏側:任天堂・岩田社長が語る“本当の”ソーシャルゲーム」)が公開された。

 スマートフォンとソーシャルゲームに押され、2012年3月期に決算公表以来初の営業・最終赤字に転落した任天堂。かつては好業績企業の代表格であった任天堂が、スマートフォンとソーシャルゲームの想像以上の勢いの煽りを受け苦境に陥っていた。だが、ここにきて好調の潮目を見せているというのだ。