本記事は同日公開の『Can't keep women's football down』を日本語化・再編集したものです。
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今年初め、FIFA(国際サッカー連盟)は女性イスラム教徒が試合中にヒジャブ(イスラム教徒の女性が頭髪を覆うためのスカーフ)の着用を認めるという歴史的な決定を下した。
この決定はまた、ヨルダンサッカー連盟の代表、アリ・ビン・アル=フセイン王子の辛抱強い働きかけが成就した瞬間でもあった。
ヒジャブ問題に関する議論が高まったのは、2011年7月のオリンピック代表選抜試合で、イラン女子チームがヒジャブ着用を理由に不戦敗とされたことがきっかけだった。
FIFAの決定を受け、アリ王子はヨルダン女子サッカーの変革を決意したが、これまでのように、ドイツ、米国、ブラジルといった国からはコーチを招聘しなかった。王子が支援を求めたのは日本だったのである。
白羽の矢が当たったのは、20年に及ぶ女子チーム育成経験を持つ沖山雅彦だった。沖山はヨルダンの女子サッカーに“革命”を起こしてほしいとの要請に応えるため、首都アンマンに赴任した。
この任命は2つの観点から注目に値する。1つ目は日本の女子サッカーに対する世界からの評価の高さ、2つ目は、サッカーがいろいろな意味でまだ男性優位のスポーツだということだ。
「なでしこジャパン」が起こした女子サッカーブーム
1つ目の点で言えば、何十人もの日本人コーチが女子チームの水準向上のため、アジア各地でユースやナショナルチームを指導している。
日本人コーチが引く手あまたな理由は明らかである。昨年半ば「なでしこジャパン」として知られる日本女子代表チームがFIFAワールドカップで優勝したからだ。アジアのチームが世界の代表的なトーナメントで優勝したのは、男女チーム合わせて史上初の出来事だった。
それはまた、日本サッカー連盟が何年もの間、日本女子サッカーリーグ(通称なでしこリーグ)を通じて女子サッカーの水準向上に投資をしてきた結果でもあった。
2部制・22チームからなるなでしこリーグは、日本の女子サッカー界の発展を牽引してきた。しかし、これまではスポンサー集めや観客動員に苦労していた。
ところが、この1年間でなでしこリーグを取り巻く環境は大きく変化した。ワールドカップ優勝後に観客数は2万人を上回る勢いとなり、今シーズンもメディアの注目を浴びるほどの観客を動員している。