1部リーグを独走するスター揃いのINAC神戸は1試合平均約8000人の観客を集め、オリンピックを控えた中断期間前の日テレ・ベレーザ(東京ヴェルディ)とINAC神戸の試合には1万7000人近くの観客が集まった。
スポンサーやTV放映も拡大している。クッキーやガムからカップラーメンまで、日本代表メンバーが出演する広告が日本中に流れ、現在リーグ第3位の岡山湯郷ベルの公式ウェブサイトには、34のスポンサーが掲載されている。
衛星放送の有料チャンネルがなでしこリーグの全試合を放送し、その多くが地元ローカル局でもライブ放送されている。「なでしこ」は本格的な人気を誇る、ビッグビジネスになっているのだ。
「パートタイム」で生計を立てるワールドカップ選手
しかし驚くべきことに、なでしこリーグは完全なプロではない。
入場券はとても安く、無料の場合もある。純粋な意味でのプロ選手は、スタークラブであるINAC神戸のメンバーでも10人に満たない。他チームの所属選手はスポンサー企業に籍を置き、サッカーに集中できるようパートタイムで仕事をしている。
それ以外の選手は、世界中の女子選手同様、サッカーで得られる収入を補うため他の仕事をせざるを得ない状況にある。
昨年ワールドカップを戦った当時のなでしこジャパンメンバーには、化学材料企業に勤務する阪口夢穂、市民体育館のインストラクターとして働く上尾野辺めぐみ、受付係の福元美穂など、フルタイムで働く選手が半数近くいた。
ワールドカップ男子優勝のスペイン代表チームで、トレーニングの合間にシャビが電話番をしたり、イニエスタが薬品を混ぜたりしているようなものだ。
朝日新聞は昨年、男女オリンピックチームの予算格差を指摘している。2011年度は男子U-22チームに8億5400万円の予算が配分されたのに対して、世界チャンピオンの女子代表に配分された予算は、わずか1億3500万円だった。
上田栄治JFA(日本サッカー協会)女子委員長は朝日新聞のインタビューに対し、女子の割合が登録選手全体の5%に満たないこともあり、この状況は妥当だと答えている。
