「沖縄の怒りは尋常ではない」「基地に様々な意見はあっても、これまで沖縄県民が米兵に石を投げたりしたことはない。一方的に被害に遭っている」

 これらの言葉は、10月22日から23日にかけてワシントンを訪問し、キャンベル国務次官補ら米政府高官と面談した際、仲井真弘多沖縄県知事が述べたものだ(「琉球新報」、2012年10月24日)。

女性集団暴行事件で沖縄県民の怒りはかつてないものに

 沖縄県は「移転」公約が16年以上にわたって果たされないままの米軍普天間飛行場への垂直離着陸輸送機「MV22Bオスプレイ」配備に、全市町村挙げて反対している。結局、県民の強い反対意思は顧みられないまま、10月に入ってオスプレイ配備が粛々と進められた。だが、その矢先の10月16日未明、沖縄本島中部で帰宅途中の女性を米海軍兵2名が襲い集団強姦致傷で逮捕される事件が発生した。

 「間が悪い」で済むような問題ではないが、あまりと言えばあまりのタイミングではあった。とはいえ、知事が「沖縄の怒りは尋常ではない」と述べた背後には、1972年の復帰以来、沖縄での米軍関係の刑法犯が5747件(2011年12月末現在)、うち殺人・強姦・強盗などの凶悪犯罪が568件に上るという実情がある。

 しかも、日米地位協定()の取り決めなどもあって、これらの事件の大半が不起訴扱いで推移してきて、被害を受けた沖縄の人々は事実上の「泣き寝入り」ばかりを強いられてきたのだ。

日米地位協定・・・正式名称「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」。主に在日米軍に関する日米両国政府の取り扱いを定めたもので、米軍関係者の裁判権は米政府が原則として保持することや、日本から米軍に提供される区域、施設に関する取り決めなどが定められている。

基地が減らないのは「沖縄への差別」

 筆者は本連載で、日米同盟が現在日本の置かれた状況において、極めて重要な役割を果たしていることを指摘してきた。一方で、日米同盟を物質的に担保する要となっているのは、その74%が沖縄に存在する在日米軍基地・施設(演習場も含む)なのだ。わずかな面積しかない島嶼部である沖縄諸島に基地や演習場が集中し、日本では最も多く米軍部隊が駐留し、出入りしている。それに伴う「負担」やあつれきを、人口比で言うなら日本全体のたった1%強にすぎない140万人ほどの沖縄県民が一身に受けていることになる。