今週は伊東乾さんの「東京大学に入ったけれど・・・ああ無常~人生の失敗を始める頭の“良すぎる”学生たち」が読者から圧倒的に高い関心を呼んだ。東京大学というブランドの強さに改めて驚かされた。日本という社会がいかに東大と東大出身者に期待しているかを如実に示している結果ではないだろうか。
日本人にとって特別な意味がある東大
伊東さんが書いている内容は、東大だけのことではなく日本の大学一般に言えることだが、東大という日本のエリートを育成してきた大学に対しては特別な思いで見ている。
もちろん、官僚養成大学という面から期待を最近の日本株式会社の経営が深刻な不振に陥っているために、その期待が失望に変わっているという面も多いに違いない。
先週まで20回続いた「頭が良くなりたければ、バカになりなさい」シリーズも人気が高かった。
伊東さん自身の経験談を中心にして、一流になるためには謙虚な姿勢で常識を疑ってかかるべしというメッセージに共感を覚えた人が多かったのではないだろうか。
長年、企業の経営者と接してその経営や人となりを文章にしてきた身から言えば、本当に一流の経営者は、素晴らしい結果を残しながらも、謙虚でいつも自分の考えとしてきたことが正しいのか自問していた。
自らの経営手腕に自信を持つことは当然だが、それがすべてと過信する経営者は人を育てられず、どんなに成功している企業でも次第に世間との距離が広がって衰退していく。
私が属していた前の組織が企画した「企業の寿命は30年」という特集が、それこそ約30年も経っているのに忘れられずにいるのは、過信こそ最大の敵という戒めに共感を覚える人が多いからではないかと思う。
伊東さんの「東京大学に入ったけれど・・・」も今後の展開が楽しみである。読者のコメントを読んでいると、筆者の伊東さんに批判的なものも多いが、自分の常識と自信を打ち砕いてくれる人にこそ、感謝すべきだと私は考えている。