欧州の債務危機が、世界経済の“頼みの綱”である中国を圧迫している。

 負の連鎖を象徴する例が太陽電池業界だ。欧米市場は頭打ち、足元の国内市場も過剰な生産設備を抱えており、まさに「八方ふさがり」の状態にある。業界全体が空回りを起こし、刻々と深刻な状況に進展している。

成長著しかった太陽光パネルメーカーが10億ドルの赤字に

 東京・港区に拠点を置く商社では、最近ある化学薬品の動きが鈍くなった。「製品の一部を中国の太陽電池関連企業に納入しているが、以前のような発注がなくなった」と担当者は話す。

 同社は間接的にではあるが、太陽光パネル生産で世界一を誇る中国の「尚徳太陽能電力」(以下、中国サンテックパワー)に納入している。

 中国サンテックパワーと言えば、2006年に日本の中堅太陽電池メーカーのMSKを買収し、それ以来、過去5年で売上高を100倍、営業利益を200倍にした驚異の成長企業だ。

 だが、ここに来てその勢いが失速した。2011年の財務報告書にはなんと「10億ドルの赤字」が記載された。「正直、ここまでひどいとは思わなかった」と同社の広報担当者も驚きを隠さない。

 中国の太陽電池メーカーと言えば、中国サンテックパワーのみならず過去数年にわたり投資家たちを狂喜乱舞させてきた優良銘柄だった。2005年から2010年にかけては24の企業が新規株式公開(IPO)を実現した。太陽電池シリコンの「賽維LDK」や太陽電池メーカーの「中電光伏」などは、100倍以上のリターンをもたらしてきたとも言われている。

 だが、2011年に入ると状況は一転し、IPOを実現させたのはわずか3企業にとどまった。

欧米で太陽電池関連メーカーが次々に倒産

 欧州に目を向けると、2011年以降、ドイツ、イタリア、スペインなどが太陽光エネルギーへの補助金を削減させている。加えて、欧州市場での需要激減や国際市場価格の下落が業界にダメージを与えた。