広島と長崎に投下された原爆により日本は世界で唯一の被爆国となり深刻な放射能汚染にさらされた。しかし、その原爆を作った米国でも原爆の製造過程で大変な放射能汚染を引き起こし、いまだに環境破壊に苦しんでいることは日本ではあまり知られていない。
砂漠に吸い込まれ続けている年間2400億円のお金
原爆投下から67年経ったいまでも米国は莫大な予算を使って除染が行っているのだ。しかし、一度失われた環境を元に戻す戦いに終わりは見えていない。
米ワシントン州リッチランド。
イチロー選手や岩隈久志選手が活躍するマリナーズ球団の本拠地があるシアトルから車を飛ばして約3時間。雨の多いシアトルとは打って変わって乾燥した大地が続くなかに小さな町が突然現れる。
この町こ隣接した広さ586平方マイル(1518平方キロ)の荒涼とした敷地はハンフォードサイトと呼ばれている。
世界で初めてここに作られた原子炉からプルトニウムが取り出され、カリフォルニア州にあるローレンス・リバモア国立研究所に送られて世界初の原子爆弾が製造され、まもなく長崎に投下された。
第2次世界大戦中から東西冷戦期にかけて米国における核兵器製造の一大拠点となった場所である。最盛期には原爆用に9つの原子炉が稼働していた。
旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所事故を機に、ハンフォードサイトの核兵器製造用原子炉はすべて運転を停止した。
しかし稼働停止から25年が経ったいまでもここでは約1万人が働いている。
同サイト内に捨てられた放射性廃棄物から出続けている放射能の除染作業をするためである。また、約4500人が米エネルギー省の研究所で除染技術の研究や環境や人体への影響調査などを行っている。