中国の不動産バブル崩壊が間もないと叫ばれている。
今のところは、急激な落ち込みを示す様子はない。実体を超えた不動産価格は、現在、微増微減を繰り返しており、表向きには「重篤」と言える症状には至っていない。
しかし、中国の某証券会社の幹部はこう言う。「中国の不動産価格は二度と上昇しないだろう」――。彼は、バブル崩壊の直撃以上に恐ろしい現象が起きようとしていることをほのめかすのだ。
「ついにあの老人が物件を手放した」
「スペイン風の一戸建て2500万元を1800万元で」
「3000万元の一戸建てが2200万元に。676平方メートル」
「500万元引き! 閔行区の豪華一戸建てが1050万元で」
筆者の携帯電話には、毎日のように不動産仲介会社からショートメッセージが送られてくる。豪華一戸建ての値引き合戦である。25~30%引きが多いが、中には40%引きに近いものもあり、この機に売り抜けようとする所有者の焦りがありありと伝わってくる。
最近、上海の投資家たちの間で、ある富豪がついに手持ちの不動産物件を売り払ったことが話題になった。
「上海の不動産価格は絶対に下落しない」と、その富豪は強気一点張りだったが、ついに物件を売却したというのだ。「絶対売らないと言っていたあの老人がとうとう手放した」ことに投資家らは不動産神話の崩壊を予感し、気色ばむ。
強気論者だったのはこの老人だけに限らない。中国の不動産はまだまだ行けると多くの人が信じていた。
中国政府が、土地の購入を限定する政策を打ち出し、市場が活気を失ってからも、「それでもいつかは好転するだろう」と様子見を続けてきた。これまで、「不動産価格が上昇した直後は調整策が入り、市場は踊り場に転じる」というのがお決まりのパターンだったからだ。「いつかまた上がるはず」と市場の回復に期待を寄せる者や、「政府がこんな状況を放っておくはずはない」と政策の転換を待つ者もいるなど、少し前までは楽観ムードが支配的だった。
だが、上海の空気はここに来て悲観ムードに転じつつある。