日本では、6月から実施予定の高速道路無料化・新料金制度の導入をめぐって政府・与党間で大揉めに揉めているようだが・・・。ドイツでは日本とは逆に、これまで無料だった高速道路(アウトバーン)の有料化が取り沙汰されている。
有料化の方針を打ち出したのは連邦環境省。2010年4月に公表した政策案「高速道路乗用車有料化」の中で、「走行1キロメートルごとに0.03ユーロ課金」し、道路補修や建設に必要な財政を確保する一方で、高速通行車両の抑制を図り、燃料消費を減らすことで環境保全につながるというシナリオを提示した。
12トン以上の大型トラックについては既に2005年から有料制が始まっているものの、「乗用車も有料化」の案には消費者から大ブーイングが起こっている。新たな国民負担が発生する政策だけに、政府内でも統一見解が固まっておらず、日本の反対路線を行くドイツの高速有料化計画は今も迷走中だ。
遠回りでもお得なドイツ高速に車が流入
ドイツの高速道路の総延長は1万2600キロメートル。「一度は速度制限無しのアウトバーンで走ってみたい」と考えるクルマ好きも多い。
確かに時速200キロメートル以上でビュンビュン疾走している車をよく目にするが、実は無制限区間にも推奨速度(時速130キロメートル)が設定されているし、大型トラックは時速80キロメートル制限がある。さらに、工事や安全上の理由で全体の6割程度の区間に制限速度が設けられている。そのためしばしば渋滞もあり、どこでも速く走れるわけではない。
ドイツは欧州の中心に位置し、ベネルクス3国、スイス、フランス、チェコなど9カ国と国境を接する。島国日本にいるとイメージがわかないだろうが、陸続きの欧州では当然、高速道路も隣国と繋がっている。
周辺のほとんどの国は高速道路が有料化されているため、欧州内では多少遠回りになってもドイツの高速道路を利用するのが、ドライバー節約術の心得。そのため、ドイツを通過するだけの国外利用者も相当の数に及ぶ。
12トン以上の大型トラックが課金されるようになったのも、周辺各国から流入する交通量の増加で、周辺の環境対策や道路の整備維持などに莫大な費用がかかるためだ。
ベルリンの壁崩壊による東西統一、欧州によるヨーロッパ経済の統合によって東欧諸国との往来が盛んになったこともあり、ドイツの高速道路は東西交通の要として、今まで以上に重要な存在となっている。