2月7日に行われたウクライナの大統領選挙・決選投票で、地域党党首のヴィクトル・ヤヌコーヴィチ氏がユリア・ティモシェンコ首相を48.95%対45.47%の僅差(投票率は約70%)で破り、26日に第4代大統領に正式に就任した(ウクライナの地域別得票率はここをクリック)。
大統領になっても政敵の首相は簡単に解任できない
2004年に大統領選の最有力候補に挙がりながら、オレンジ革命の波にのまれて屈辱的な敗北を味わわされたヤヌコーヴィチ氏のリベンジと言えるかもしれない。
当時の勝利者だったヴィクトル・ユーシェンコ前大統領も今回再選を目指したが、第1回投票での彼の得票率5.45%はヤヌコーヴィチ氏の7分の1に過ぎず、早々とリングから姿を消した。
そのユーシェンコ前大統領と組んで、2004年にはヤヌコーヴィチ氏を不正選挙の責任を取らせる形で追い落としたティモシェンコ氏だったが、今回は国際監視団も概ね公正な選挙だったと早々とアナウンスしてしまったため、場外乱闘にはもはや持ち込めなかった。
一方、大統領になったヤヌコーヴィチ大統領にしても、難題山積である。「誰が辞めてやるもんか」とばかりに頑張っていたチモシェンコ首相は、内閣退陣を議会で可決されると、今度は焦土作戦に出てきた。内閣を放り出し、議会の解散・総選挙を目指し始めたのだ。
今の内閣を支える連立が3月初めに解消され、憲法上は4月初めまでに議会内で新たな連立を作らねばならない。それまでは事実上政府不在になってしまった。代行と言う名目は置かれるが、これ自体が法律違反(内閣の職務懈怠)との指摘もある。だが、それにお構いなく彼女は休暇に出てしまう。
地域党は議会での多数与党を結成しなければならない。これに1カ月以上時間がかかると、議会解散の可能性は濃くなる。彼等もそこまで覚悟ができているかどうか。
ヤヌコーヴィチ大統領を送り出した地域党は、最大政党とはいえ議会(一院制)の定数450人のうち171人だけだから、過半数を取るには第2党のティモシェンコ・ブロック(151人)以外の政党と連立を組まなければならない。
火の車の財政に支援の手は期待できない
マイナー政党と組んだだけでは225議席を超えられないので、政権半ばからティモシェンコ首相と犬猿の仲になってしまったユーシェンコ前大統領の政党である、「我らのウクライナ」(72人)とすら手を結ぶ必要が出てくるかもしれない。
そうなると呉越同舟の体裁づくりにああでもない、こうでもないが始まるから、話がまとまる頃には夏休みが始まっているだろうという、冷めた、と言うより絶望的な声すらある。