ロシア政府による2009年ロシア経済マクロ予測は何度も修正された結果、GDP(国内総生産)で前年度比8.5%あたりの減少に落ち着くようである。
何度も下方修正を重ねたロシア経済マクロ予測
BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の中では際立った落ち込みで、その仲間からも外されるのでは、とまで評される。
2008年10月にプラス5.5%と予測してから下方修正を重ねた末であり、これだけ予測修正を行わねばならなかったのは、結局は経済動向の見極めが政府にできなかったから、ということになってしまう。
アレクセイ・クドリン財務大臣も、今年の1月の段階では現在のような結果になるとは全く予想していなかったと認めている。
しかし、IMF(国際通貨基金)や世界銀行(世銀)も世界主要国の経済見通しを何度も改訂し、ロシアについては昨年11月の予測であるプラス3.5%から始まっているのだから、ロシア政府のみが予測能力に欠けていたなどとは言えない。
民間機関・企業ともなれば、その予想結果の採点では死屍累々の有様である。
誰にもロシア経済の落ち込みの大きさと回復の緩慢さの予想がつかなかったのが今年のロシア経済だった(筆者も回復時期を見誤った)。では、なぜ予想が不首尾に終わったのだろうか。この理由は数多く挙げられるが、以下の2点を見てみよう。
(1)世界経済の見通しの難しさ
経済の落ち込みの大きさが予想を超えた理由は、煎じ詰めれば世界経済がどうなるかの見通しが誰にも分からなかった(今ですら楽観・悲観が交差しそれぞれ譲らない)ことに求められるだろう。
ただ、世界経済がどうなるかなど、しょせんは筮竹(ぜいちく)や水晶球の世界の話であったとしても、ロシア経済が世界経済にどれだけ深く組み込まれてしまっていたかの意識が、少なくとも危機の初期段階でロシア政府当局に不足していたことは確かなようだ。
2008年9月のリーマン・ショックが起こるまで、ロシア政府はプーチン首相以下皆が、欧米での金融問題発生は対岸の火事と見て、問題が実体経済ではなく金融部門で起こったことから、金融の不具合はロシア経済の内外需要に直接大きな影響はさほど与えまいと踏んでいた。
さらに、たとえロシア経済が世界経済に組み込まれていることを理解していた向きがあっても、自動車などとは異なり、他国が買わないで済ませるわけにはいかないエネルギー資源をロシアは擁しているのだから安心、といった気分が政府当局のみならず多くの国民に共有されてだろう。