前回は、「問題のない不整脈」について、杏林大学医学部・第二内科の准教授・池田隆徳先生に話を聞いた。今回は引き続き、「危ない不整脈」についてインタビューした。

脈が速くなる不整脈には要注意

池田 隆徳(いけだ・たかのり)
杏林大学医学部・第二内科の准教授。不整脈センターの統括責任者。東邦大学医学部卒業。カリフォルニア州シーダス・サイナイ医療センターに2年間留学。循環器病学、特に不整脈の診断と治療、突然死の予防などを専門とする

――危ない不整脈としてはどのような不整脈があるのでしょうか?

池田 1つは脈が速くなる「頻脈性不整脈」です。普通、人間の脈は、1分間に60~80回が正常です。

 ところが、頻脈性不整脈では、100回以上、場合によっては200回以上になることがあります。

 そうすると、心臓から十分な血液を送り出すことができなくなります。意識が遠のいたり、場合によっては意識がなくなることもあります。

 特に、心室性の頻脈性不整脈はより危険です。心臓は、上の部分が心房、下が心室となっていますが、心臓の筋肉が厚くて全身に血液を送り出すポンプ役を担っているのが心室です。

 これが頻脈になると、より危険性が高くなります。病名としては「心室頻拍」や「心室細動」があります。

――心室細動はニュースなどでもよく聞きます。

池田 心室が小刻みに震えて全身に血液を送ることができない状態です。いったん発生すると、10秒前後で意識を失い、そのままだと心臓突然死を来してしまいます。非常に危険な状態なので、一刻も早く電気的除細動を行う必要があります。最近では、自動体外式除細動器(AED)が公共施設などで設置されており、活用されています。

心室細動の原因

――心室細動を起こす原因は、何なのでしょうか?

池田 心筋梗塞や心臓症などの心臓病の既往がある場合が多いですが、急性心筋梗塞の初発症状であったり、また後ほどお話ししますが、ブルガダ症候群などのように生まれつきの遺伝子異常が背景にあることもあります。

 さらに、心臓に異常がない人でも、脱水や栄養障害、腎機能障害などによって血液中の電解質に異常を生じて発症することがあります。また、子供が胸にボールを強く打ちつけた時に偶発的に誘発されることもあります。