海外への生産移管や部品の海外調達が進み、縮小傾向にある日本の製造業。そんな中で、これから市場拡大が大きく見込めそうな稀有な業界がある。それは、航空機産業だ。

 日本の次世代の主要産業の1つとして、航空機産業に注目が集まっている。世界的な景気の低迷で、現時点では落ち込んでいるものの、今後20~30年かけて世界市場が大きく拡大すると見られている。

 経済産業省 中部経済産業局の彦坂謙二参事官によれば、「今後20年で、世界のジェット機の需要は2倍になる」という(2009年11月4~6日に東京ビッグサイトで開催された「東京国際航空宇宙産業展2009」での講演にて)。「航空機産業は今後20年で約300兆円の市場がある」という、ボーイングやエアバスの予測もある。

大きな期待が集まる40年ぶりの国産ジェット「MRJ」

 日本でも、航空機産業への参入がブームと呼べる状況になりつつある。特に日本では、三菱航空機が開発した国産ジェット旅客機「MRJ」(Mitsubishi Regional Jet)に、大きな期待が寄せられている。MRJは、「YS-11」以来、約40年ぶりの開発となる国産ジェット旅客機である。

三菱の国産ジェット、米社から100機の大量受注

10月2日、三菱航空機は米国の地域航空会社から「MRJ」を100機受注したと発表した〔AFPBB News

 すでに全日本空輸が25機のMRJ導入を決定しており、10月初頭には米国の地域航空会社が100機購入したというニュースも流れた。MRJの量産が始まれば部品メーカーへの発注が増え、日本の航空機産業が活性化するとの期待がかかっている。

 そうした状況を受け、今まで他分野で培ってきた部品製造や機械加工の技術を生かして、航空機産業に挑戦したいと考える中小企業が増えている。

 ただし、他分野から簡単に航空機産業に参入できるものではない。「航空機産業への参入には、技術と人材、そして機械設備が必要。それらを揃えたとしても、品質、日程、コスト管理などの面でハードルは高く、そうとう頑張らないと難しい」(元川崎重工業取締役で「関西国際航空機市場参入等支援事業検討委員会」委員長を務める榊達朗氏、「東京国際航空宇宙産業展2009」での講演にて)。