MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  

 今年7月17日、相馬光陽サッカー場(福島県相馬市)で「取り戻せ!元気な相馬サッカー大会」が開催された(主催:相馬市・NPO法人ドリームサッカー相馬)。

 目玉は清水商業高校(静岡県)と地元相馬高校のサッカー交流試合、および名波浩さんをはじめとする清水商業OBのサッカー指導だ。10人以上のJリーガーが駆けつけた。その中には多数の日本代表が含まれる。市民は大歓迎で、総勢3000人程度が参加したという。

三島の鍼灸師・藤田義行氏が実現させた交流試合

 この企画を実現させたのは、静岡県三島市在住の鍼灸師・藤田義行氏だ。藤田氏と私は、医療改革を語り合う仲間である。

 震災後、私に「被災地を訪問してみたい」と連絡があり、ゴールデンウイークに相馬市にやって来た。そこで彼は「被災地の子どもたちにスポーツを提供しなければ」と感じたらしい。

 藤田氏の鍼灸の腕は高く、スポーツ界に広いネットワークを持つ。三島市に戻った藤田氏は、旧知の清水商業サッカー部・大瀧雅良監督に連絡した。私も藤田氏の紹介で、大瀧監督とは旧知の間柄である。

 大瀧監督は快諾し、今回の企画が実現した。実際の調整は、藤田氏が相馬訪問で知り合った立谷秀清相馬市長と連携して進めたらしい。

 大瀧監督は我が国の高校サッカー界を代表する名監督だ。1985年以来、全国高校サッカー選手権を3度制覇し、全国で最も多くのJリーガーを輩出している。今回の相馬訪問でも、高校生・OBを問わず、被災地に一切の負担をかけず、完全ボランティアで参加した。

 彼は「サッカーは人間教育」と考えており、サッカーの技術が卓越していても、人間としての修練が不十分と判断した選手は使わないらしい。大瀧スピリッツは、サッカー界で尊敬されている。

 後日、「多くのJリーガーが参加できたのは、大瀧監督の信頼によるものだ」と聞いた。売れっ子のJリーガーたちが日程を調整し、被災地に勢揃いするのは、私が想像するよりはるかに難しいらしい。

 相馬高校と清水商業の試合は、9-0と清水商業の圧勝であった。多くの人々の予想通りの結果である。ただ、実際に間近で見た感覚と結果は大きく食い違う。