昨今の韓国企業の躍進は、周知の通りだ。北米や西欧のみならず、中東欧、アジアなど、あらゆる地域で韓国企業のプレゼンスが高まっている。
例えば、各国の玄関である空港で、注意深く周囲の景色を見てほしい。先日、筆者はドイツのフランクフルト空港で、「ほほぅ」と唸った。LG電子の携帯電話端末、液晶テレビの宣伝が天井からずらっと吊り下がっている。
足早に人が行き交うフロアには、起亜自動車のディスプレイがある。空港の自動ドアを抜けて外を眺めると、巨大な「手のオブジェ」が携帯電話を握っている。オブジェには、「SAMSUNG」のロゴがある。
起亜自動車はウィーン空港でも同じように車を展示し、また、スロヴァキアの工場紹介パネルも展示していた。
今回は、筆者が欧州、中東欧で見聞きした韓国企業の工場や販売の様子を述べていきたい。
日本からなかなか見えない韓国メーカー製造拠点の実像
日韓製造業の繋がりは、特に生産財の分野で濃い。日本から韓国には、大量の部品・素材や工作機械が販売されている。特に韓国エレクトロニクス企業は、日本製造業が持つ重層的な技術基盤に頼っている感もある。
日本企業の方も、自動車業界で韓国企業の素形材や金型を使ってみようとか、ポスコ(韓国の鉄鋼メーカー)の鋼材を購買品評価対象にしてみる、といった動きもある。
しかし、どうも最終消費財の分野では、企業同士の交流までは縁遠い様相である。
ある韓国企業の中国工場で聞いた話だ。この工場では、競合相手である台湾企業の工場見学を受け入れ、互いに議論もするという。工場の生産品目は、日本では「ブラックボックス」とされて、競合はおろか、社員でも生産現場に足を踏み入れるのが難しい製品だ。
彼らは競合他社への工場開放を「オープンマインド」と表現し、韓台の共進化を唱える。ともに学習しようという発想である。しかし、日系企業はこれに乗ってこないそうだ。見せてもらえば、こちらも見せなければならない。これがネックになっていると推察できる。
日系企業の中には、他メーカーと互いに工場見学などを実施し、両者のいい点を学び合っているところがある(海外拠点で多い)。もちろんすべて見せるわけではなく、見せないところは、見せない。
何もかも「クローズ」にすると、ブラックボックス化の隠匿コストが大きくなるし、相互学習の機会も閉ざされる。実は、「見せる」「見せない」の仕分けは、自分自身を理解するとともに、競合他社など外部の動向にまで目を配って初めてできることだ。
すでに生産・製造技術情報が外部に知れ渡っていたり、競合他社も同じ取り組みや工夫をしているのであれば、特段見せてもかまわない領域もあるだろう。むしろ、同じような工夫をしているのであれば、良いところを学び合えばよい。