温室効果ガス25%削減(1990年比)を、国連総会の場で高らかに宣言し、華々しい外交デビューを飾った鳩山由紀夫首相。また、岡田克也外相がぶち上げた日米間の「密約問題」の解明。政権交代をきっかけに、外交がにわかに注目を浴びている。
しかも、それは国内だけでなく、世界的にだ。過去の論文を紹介する形ではあるが、鳩山首相の外交方針がいち早くニューヨーク・タイムズ紙に掲載されたことにも象徴されているだろう。新政権になったことで、日本の外交が変わると期待されているのである。
何しろ日本が直面している外交課題は、いずれも世界を巻き込む大問題ばかりだ。先述の地球環境問題をはじめ、インド洋での給油継続問題、普天間基地の移設問題、北朝鮮の安全保障問題、東アジア共同体の構築問題・・・。
一見、外交などというものは、ほとんどの市民には縁のない、遠い世界のことのように思われがちである。しかし、実は外交の問題はすべて、一人ひとりの生活や生命に直接影響を及ぼしかねない「今そこにある危機」にほかならない。
今回のいわば外交ブームは、誰もがそのことに気づくいいチャンスであると言えるのではないだろうか。
人間は「共同体の動物」だから外交を行う
そもそも「外交」とはいったい何なのか? 手元の『政治学辞典』(弘文堂)によると、「外交は主権国家間の紛争処理技術の1つであり、説得・妥協・強制などの手段により、交渉による紛争の解決をめざす」とある。
これはもっともな定義だろう。外交とは「外国」との「交渉」だというのだから。外交が必要なのは紛争を処理するためだというのも、異論をはさむ余地がない。
紛争と言うからには、お互いに主張すべき利害があって、それが対立しているのである。だから、これを解決するためには、説得したり、強制したり、時には妥協することが求められる。
ただ、この定義に抜け落ちている大事なことがある。それは、なぜ紛争を解決しなければならないのかという点だ。
まず、現在、世界各国が経済活動によって結びついており、1つの国だけ孤立しては存続できないという理由が挙げられる(北朝鮮の危機的な状況を思い浮かべてほしい)。
さらに、私はもっと大きな理由として、人間が「共同体の動物」であることを挙げたい。根っから好戦的な人も中にはいるが、人間は本質的に、他者と良好なコミュニケーションを図り、共同体を作って暮らしていくことを望んでいる。