映画祭をやることになった

 10月9日、山口県ではほとんどすべての新聞紙面に映画祭の記事が大きく取り上げられた。前日、私が実行委員長を務めるこの地域初の本格的な映画祭「周南映画祭~絆~」(11月21~23日、山口県周南市にて開催)のプレス発表を行ったからだ。

 私がこの映画祭の実行委員長をやるきっかけとなったのは、実は俳優の別所哲也氏との出会いにさかのぼる。別所氏がナビゲーターを務めるラジオ番組に2度ほどゲストで招かれたのだ。

 別所氏はもう10年以上も前からショートフィルムの映画祭を主催している。しかも世界的に権威のあるアカデミー賞公認の映画祭に認定されているのだ。

 そんな彼のこれまでの軌跡を描いた『夢をカタチにする仕事力 映画祭で学んだプロジェクトマネジメント』(光文社)が、2度目のゲスト出演の直前に出版された。すごくエネルギーを感じる本で、強い影響を受けた。

 収録の後、私がやっている「哲学カフェ」に映画上映を取り込んでみようかなどと本気で話していたのだ。

 私はもともと映画が大好きで、数少ない趣味であるとも言える。だから、市の「まちづくり総合計画」を策定するための審議会の場でも、全国規模の映画祭をやってはどうかと訴えていたぐらいだった。

映画祭で駅前や商店街を盛り上げたい

 その矢先、縁というのは不思議なもので、「哲学カフェ」の参加者の中に偶然映画関係者がいて、映画祭をやりたがっている人たちがいるという話を聞いた。そこからは早かった。

 周南地域で映画に携わっている団体のメンバーが一堂に会し、一気に映画祭をやろうという話になったのである。集まったメンバーの思いは皆共通しており、単に映画を軸としたお祭りをやりたいというだけではなく、元気のない駅前や商店街を盛り上げたいという気持ちで一致していた。

 そこで、まちづくりの一環として映画祭を位置づけることになった。私のような映画とは直接的に無縁の人間が実行委員長を務めることになったのも、そうした理由からである。

 かくして私たちの手作りの映画祭は、まちの元気を取り戻すという熱い思いだけを武器に、まったくの手探りの状態で始まった。サブタイトルの「絆」、スローガンの「映画・絆・まち・元気!」が決まるまで、そう時間はかからなかった。

 そして全員がボランティアで、人の縁、絆だけを頼りにゲストを探し、フィルムの交渉などを行った。また、地域を盛り上げるために、映画だけでなく、ライブハウスの音楽イベントとのコラボレーションを企画したり、シニア向けのうたごえ大会や、私の哲学カフェも映画館でやることにした。

 気づけば10人ほどで始めた小さな映画祭プロジェクトは、数百人を巻き込む規模に膨らんでいた。こうしてまさに、「今ある絆」が「新しい絆」を生み出すかたちとなったのである。公式ホームページも立ち上げたので、ぜひ一度のぞいてみていただきたい。